投資大好きな80代父「NISA口座」を残して死去…「NISAの相続、どうすればいいの?」50代息子の困惑【税理士が解説】
国民の資産形成を促すため、政府が主導しているNISA制度。しかし、投資している方が亡くなれば、当然ですが相続が発生します。相続時におけるNISA口座の扱いはどうなるのでしょうか。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
高齢父が開設していた「NISA口座」だが…一体どんなもの?
80代の父が亡くなりました。父はシニアになってから投資に興味を持ちはじめ、NISA制度ができてすぐにNISA口座を開設し、投資信託を購入しています。父のNISA口座の相続は、どのように行えばいいのでしょうか? 50代の私ですが、恥ずかしながら投資にうとく、「NISA口座」がどのようなものかいまひとつ理解できません。 55歳会社員・男性(川崎市在住) 筆者のもとに、このような相談が寄せられました。そもそもNISA口座についてよくわからないとのことなので、まずはNISA口座について見ていきましょう。 「NISA口座」とは、証券会社で特定口座以外に個人が開くことのできる証券口座のひとつです。 本来、一般口座や特定口座で株式や投資信託を運用した場合、配当金・分配金、売却して得た売却益などの利益に20%の税金がかかります。しかし、「NISA」は株式や投資信託で稼いだお金に税金がかからない非課税制度です。つまり、NISA口座で得られた利益は非課税なのです。 さらに、2024年から始まる新しいNISAでは、NISA口座で購入できる金額の上限が1,800万円に引き上げられ、また、NISA口座を永久に使い続けることが可能となりました。さらに、途中で売却しても翌年には投資枠の再利用が可能になるという、とてもお得な制度なのです。
亡くなった父の「NISA口座」、相続に伴う税金はどうなる?
このように、大変お得なNISAですが、NISA口座を持つ方が亡くなった場合、そのままでは、売却はもちろん、配当金・分配金を受け取ることはできません。受け取るためには、相続手続きが必要です。また、「相続税」が課税されます。 NISA口座の相続手続きの流れですが、相続人は、被相続人の死亡を知った日以後、遅滞なく、証券会社へ「非課税口座開設者死亡届出書」を提出します。NISA口座の株式や投資信託を相続人の特定口座へ移管する場合は、「相続上場株式等移管依頼書」も併せて提出する必要があります。その際の相続人の特定口座は、被相続人のNISA口座と同一の証券会社になければいけません。 また、高齢者が長期間運用していた場合、株式や投資信託が値上がりしてNISA口座に含み益が発生している可能性があります。しかし、NISA口座で投資した商品の取得価額よりも、相続発生時までに値上がりしたことで生じた含み益は非課税となるため、「所得税」はかかりません。 相続人の特定口座に移す際には、相続発生日の時価で移すことになります。相続が発生したときには「株式や投資信託を時価で売って解約した」とみなされるためです。 相続人がNISA口座を持っている場合、被相続人のNISA口座の商品をそのまま相続人のNISA口座に移せたら…と考える方もいるかもしれませんが、相続が発生した時点で、被相続人のNISA口座は終了します。 そのため、相続人の方がNISA口座を持っていても、相続人の証券口座に移す場合は一般口座または特定口座に移すことになり、相続人のNISA口座に移すことはできません。したがって、相続によって取得した株式や投資信託はNISAの適用を受けられず、通常通り課税されることになります。