「不正の撲滅は無理」トヨタ会長の発言を越える! 5社型式不正問題から学ぶ、業界再建のステップとは
認証不正発覚の根本原因
認証不正の個別事例や自動車メーカー各社のトップの発言よりも、注目すべき重要なポイントがいくつかある。 まず、自動車メーカー各社の認証制度に対する遵法意識の低さが浮き彫りになった。豊田会長は会見で、 「現場の試験と認証プロセスで求められる手順にギャップがある」 と認めた。また、マツダはダイハツ工業の不正が発覚した際、「社内から同じような事象があると指摘があった」と述べ、認証試験の進め方について社内で疑念が広がっていたことが明らかとなった。 さらに、各社の会見では認証制度を軽視するような説明が目立った。自動車メーカー側は、より厳しい条件で試験を実施したと主張し、悪質性はないと強調したが、その結果、遵法意識の低さが浮き彫りになった。国土交通省は、遵法性を重視し、今後の調査は一層厳格になると予想される。 認証制度は、メーカーが国の保安基準を満たすことによって量産・販売が許可される非常に重要な仕組みである。その根幹に立ち返り、官民一体となって速やかに是正に取り組む必要がある。
不正が引き起こす広範囲な影響
自動車産業は日本の基幹産業であり、国内で約550万人が従事している。今年明らかになった認証不正は、個別の事例にとどまらず、その影響が予想以上に広範囲に及んでいる。 対象車種が出荷停止になると、発注したユーザーに直接的な影響を与えることになる。例えば、マツダは5車種の対象について約3500件の顧客に影響を与えると発表しており、納車直前で出荷停止となったユーザーからも不満の声が上がっている。 また、生産工場の操業停止が引き起こす影響は、従業員や取引先企業、地域経済にまで広がる。1月、ダイハツが操業停止に追い込まれた結果、 「GDPが約2%減少した」 という説もある。 認証不正を起こした自動車メーカー各社には、再発防止に向けた確固たる企業姿勢が求められており、その実行を今後も注視する必要がある。
三國朋樹(モータージャーナリスト)