復活したニコンようかん、その「裏」を徹底解明【道越一郎のカットエッジ】
知る人ぞ知る「ニコンようかん」が復活した。2019年にネット販売が終了して大騒ぎになったが、その後、ニコンミュージアムだけで細々と販売を継続していた。ところがこの2月、品川にあったニコンミュージアムが閉館するにあたり、ニコンようかんの販売が途絶えていた。しかし10月12日、創業の地ともいえる西大井に建てた新社屋に、ニコンミュージアムが新装オープン。めでたくニコンようかんも復活、販売を再開した。念のために付け加えておくが、あのカメラのニコンの「ようかん」だ。 正式商品名は「ニコンひと口ようかん」。1個50gのミニようかんの詰め合わせだ。価格は「本ねり」「いも」「ゆず」「くり」「コーヒー」の5個入りが1400円、それぞれの味が2個ずつ入った10個入りが2800円だ。旧価格は35gの15個入りで1728円と1gあたり3.3円だったが、昨今の経済情勢を反映し、1gあたり5.6円と1.7倍に値上げされたのは、庶民にとっては残念だ。復活に伴ってパッケージデザインも一新。なんとズームレンズ断面にある各レンズが、「本ねりの小豆」「いも」「ゆず」「くり」「コーヒー」で構成されているというもの。同社ならではの高画質からくるおいしさを連想させる仕上がりになっている。 実はこのニコンようかんには「裏」がある。同社の象徴的な製品のイラストと発売年が、各味のパッケージ裏にひっそりと記されているのだ。古くは1921年発売で、今も販売を継続している超小型双眼鏡「ミクロン」。「いも」味だ。続いて「ゆず」味は、25年発売でニコンが設計した初の顕微鏡「JOICO ジョイコ」。オールドファンには忘れられない、59年に発売した一眼レフの初号機「ニコンF」は「本ねり」味。80年発売の半導体露光装置「NSR-1010G」は「くり」味だ。ニコンミュージアムの象徴ともいうべき87年の「合成石英ガラスインゴット」が「コーヒー」味。いずれも上品な甘さで、ちょっとした休憩にピッタリだ。特にユニークな「コーヒー」味は、コーヒーと一緒に食すと、どちらが本物のコーヒーかよく分からない、奇妙な共演を楽しむことができる。 新装なったニコンミュージアムは、約670m2と旧ミュージアムより広々としたエリアに、約1300点を展示。ニコンファンにとってはパラダイスのような空間だ。ようかん裏にも登場し旧ミュージアムにも鎮座していた迫力の「合成石英ガラスインゴット」も健在。リニューアルオープンに伴って再研磨を施したという。特筆すべきはむき出しのレンズ展示。触るのはご法度だが、カタログでしか見たことのないような膨大な交換レンズ群の実物を、間近で眺められるのは圧巻だ。加えて、実機を触ってシャッターを切ってみることができるタッチ&トライコーナーも設置。レンジファインダーの「Nikon SP」や水中カメラの金字塔「NIKONOS V」もあり、正直初めて実機を触りシャッターを切ってみることができた。モータードライブで高速にフィルムを巻き上げながらシャッターを切る「Nikon F3」に超望遠レンズをつけたセットも展示。いろんな機器に付加しているシャッター音の原型ともいえる「これぞシャッター音」という音も聞けて楽しい。 限定販売のニコンようかんを買いに行くも良し。ノスタルジーを探しに古のカメラを眺めに行くも良し。おしゃれな新社屋の一角を見学しに行くも良し。ニコンミュージアムはJR西大井駅から「光学通り」を通って徒歩4分。ニコン新本社の中にある。入場無料だ。ちなみに光学通りとは旧社名「日本光学工業」からとったもの。ニコンとともにあった街が西大井だ。ここから同社はどんな歴史を刻んでいくのか、しっかりと見守っていきたい。(BCN・道越一郎)