FRBの利下げは5月との観測が強まる:逆方向の日米金融政策の観測が交差する異例の事態:日本銀行は2%物価目標の呪縛を解くべき
逆方向で日米金融政策が交差する異例の事態
米国ではFRBの早期の利下げ観測が強まる一方、日本では日本銀行が3月の次回会合でもマイナス金利政策の解除に踏み切るとの観測が強まっている。両国で逆方向の金融政策修正が近い将来に行われるとの観測が強まるのは、歴史的に見てかなり異例のことだろう。こうした状況では、為替市場のボラティリティが高まるリスクがあり注意が必要だ。 実際には、FRBの利下げと日本銀行の利上げの間には、一定の時間的なずれが生じる可能性が高い。日本銀行の利上げが3月でFRBの利上げが5月、あるいはFRBの利上げが5月で日本銀行の利上げが10月、などといった可能性が考えられる。
日本銀行が2%の物価目標達成を宣言すれば、金融市場が動揺するリスク
金融市場は、日本銀行が3月あるいは4月の会合でマイナス金利政策解除に踏み切る可能性を強く織り込んでいる。実際にそうなった場合、日本銀行は、今までの説明の通りに2%物価目標達成を宣言したうえで、マイナス金利政策を解除するだろう。しかしそれはリスクを伴う選択だ。 本当に2%物価目標が達成され、この先も2%程度の物価上昇率、インフレ期待が続くのであれば、日本銀行は比較的早期に短期金利を実質プラスの水準、つまり2%以上の水準まで引き上げる必要が出てくる。金融市場がそうした可能性を織り込めば、長期金利が大幅に上昇する、あるいは円高が急速に進む、といった金融市場の混乱が引き起こされる。日本銀行は、マイナス金利政策解除後も金利は緩やかなペースでしか上昇しないと説明しているが、それは2%物価目標達成と矛盾している。 金融市場は、日本銀行は2%の物価目標が達成したと確信している訳ではないが、異例の金融緩和を見直すために、方便として2%の物価目標達成を宣言すると考えているだろう。ただし、市場の多数がそうした見方であっても、一部で2%の物価目標達成を額面通りに受け入れれば、金融市場の動揺は起こり得る。
マイナス金利政策解除後も日本銀行は2%の物価目標に縛られ続けるリスク
また、日本銀行が説明する輸入物価上昇の一時的な影響による物価上昇、いわゆる「第1の力」から、賃金、サービス価格上昇を伴う持続的な物価上昇、いわゆる「第2の力」への移行が起こる可能性は低く、既に足元で明確となっているように、コアCPIの前年比上昇率は今年後半以降に1%台が定着し、来年には1%割れが見えてくるだろう。 物価上昇率がそうした推移を辿れば、日本銀行の2%の物価目標達成の宣言は拙速だったとの批判が高まり、日本銀行はレピュテーションリスクを負うことになる、また、今後も、物価上昇率が2%を下回り続けるなか、日本銀行の政策の正常化が封じられてしまう、あるいは追加緩和の圧力が外部から強まるなど、日本銀行の政策が強い制約を受ける可能性があるだろう。