ドラマを“SNSで考察しながら”視聴する人は「ドラマを見てねえ」。伏線回収ブームの“違和感”を昭和おじさんが語る|ドラマ『不適切にもほどがある!』
3月8日に『不適切にもほどがある!』(TBS系、金曜よる10時~)の7話が放送されたが、昨今のドラマにおける“伏線回収ブーム”を揶揄(やゆ)するシーンが印象的な回だった。
ドラマはSNSで考察しながら観るのが当たり前?
序盤、テレビ局・EBSテレビのカウンセラーを務める小川市郎(阿部サダヲ)は、ドラマプロデューサー・羽村(ファーストサマーウイカ)から、「最近の視聴者は展開を考察してつぶやきながら見るんです」と無数に散りばめられた伏線に対して、SNSで考察しながら視聴することが昨今のドラマの見方であると説明。市郎はすかさず「そいつら見てねえな」とツッコむが、羽村由貴は「でも大事なお客さんだし、この人たちの承認欲求はここで満たされてるわけです」と続ける。 伏線を回収したくて仕方のない視聴者は多いために、ドラマの制作側は頭を抱えている様子。実際、羽村は自身が担当するドラマの脚本家・江面賢太郎(池田成志)から、ドラマの脚本が進んでいないと聞かされる。江面は「うーん、どうも伏線がね」「1話の伏線を最終話に、こう上手く回収できるか」と理由を話す。「用意した伏線を見事に回収する脚本を書かなければいけない」という呪縛に取りつかれ、筆が止まっているようだ。
最終回が決まっているからこそ
後半にかけて徐々に調子を取り戻す江面であったが、「1話からの伏線を最終回で全部回収して、最後のピースがラストシーンでズバッとハマってエンドマーク、これしかないよ」とやはり伏線回収の呪いはまだまだ解けていない。「ゴールさえ決まれば道筋が決まるんだよ。そしたら一気に書けるんだよ」と最終回に回収される伏線をまず最初に考え、そこから逆算しなければ脚本は書けないと話す。 しかし、市郎は「どうなるか、いつまで続くかわからないから面白いんじゃないの?」「いつか終わる、ドラマも人生も。だからそのギリギリ手前までとっちらかってて良いんじゃないかね?」「最終回が決まってないなんてさ、最高じゃん」と語気を強めた。 現在2024年で暮らしている市郎は本来、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で、娘・純子(河合優実)と一緒に亡くなる“過去”が決まっている。仮に回収されない伏線ばかりの未来になったとしても、自身の“最終回”がわかっている市郎にとって、最終回が決まっていないことはそれだけで希望なのかもしれない。だからこそのセリフだったように感じた。