ドラマを“SNSで考察しながら”視聴する人は「ドラマを見てねえ」。伏線回収ブームの“違和感”を昭和おじさんが語る|ドラマ『不適切にもほどがある!』
伏線回収ブームの火付け役になったドラマは
SNSで伏線の目撃情報を共有して、どのように回収されるのかを考察する、という風潮にチクリと刺す内容だった『不適切にもほどがある!』7話。こうした伏線回収ブームは2019年に放送されたドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)で一気に過熱して、ミステリードラマに限らず、あらゆるジャンルのドラマでもSNSで考察する流れが定番化した。 SNSで意見を言いながら鑑賞することはシンプルに楽しいが、なにより“安全性”もブームの背景にあるのではないか。伏線回収は言い換えると“答え合わせ”。ドラマにおける“答え”は基本的に犯人やトリックであり、つまりは1つしかない。1つしかない答えを考察した投稿をするほうが、自身の感想を投稿することよりもハードルは低い。 ドラマの感想を自由に投稿した場合、真逆の考えを持つ他者から攻撃されてしまうのが昨今のSNS事情。場合によっては吊るし上げられ、炎上してしまう可能性も少なくない。仮に予想が外れても感想が外れるよりはリスクが低く、考察するほうが手ごろに承認欲求を満たすことができる。時代とマッチしたことも伏線回収ブームの要因のように思う。
伏線を全部回収しなくても、間違いなく“面白いドラマ”
とはいえ、ドラマに限らず、漫画や映画も本来は自由に楽しんで良いはずだ。「終わり良ければ総て良し」という言葉がある通り、伏線が回収されずに残ったまま最終回を迎えると、確かに物足りなさを覚えてしまう。それでも、「伏線がどう回収されたか」「考察し甲斐はあるのか」はその作品を評価する1つの指標に過ぎない。 『不適切にもほどがある!』7話では向坂キヨシ(坂元愛登)が佐高強(榎本司)の家で一緒にファミコンで遊ぼうとしている時、カセットに息を吹きかける強を見て、「それ、やんないほうが良いみたいだよ」「フーってやつ、意味ないって。Yahoo!知恵袋に書いてあった」と注意したりなど、笑みがこぼれる小ネタが相変わらずふんだんに用意されていた。時に感動的な展開になるが、毎話一貫して笑えるポイントは多く、伏線を必死に探そうとすることが野暮に思えるほどの馬鹿馬鹿しいボケも珍しくない。 仮に『不適切にもほどがある!』がとっちらかって終わったとしても、間違いなく“面白いドラマ”と言って良い。『不適切にもほどがある!』の、特に7話からは、考察ばかりではなく作品の好評、時には酷評を自由に言い合える未来になってほしいというメッセージを感じた。 <文/望月悠木> 【望月悠木】 フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki
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