キンプリのApple Music配信は“音”が違う? ユニバーサル新スタジオで最新立体音響を体験
■聴き比べれば“一聴瞭然” 圧倒的な広がりと没入感に感動 さっそく、この素晴らしい音響設備でユニバーサルミュージックの楽曲を聴いた。違いを実感するため、ステレオ版とドルビーアトモス版の両方を聴き比べている。 まず聴かせてもらったのが、海外アーティストのティエスト & セブン(Tiësto & Sevenn)のEDM曲「BOOM」。ステレオ版は重低音とともに目の前にクラブの景色が広がるような印象だったが、ドルビーアトモス版ではさまざまな音が前後左右に動きまわり、頭上からも音が降り注いでくる。まるで本物のクラブ空間に瞬間移動してきたような気分だ。立体音響とはどのようなものなのかが、とてもわかりやすく作られている。 続いて、キンプリの「ツキヨミ」を聴かせてもらう。聴き慣れたステレオ版に比べドルビーアトモス版のほうが空間が広く感じられ、音の分離がハッキリしてひとりひとりの歌声が聴き分けやすくなっている。5人が入れ替わりながらメインのメロディを歌いつつ、そこにコーラスが繊細に重なっていき、5人がステージでパフォーマンスしている様子が目に見えるような感覚を味わえる。それほど5人の声の存在感がリアルで、キンプリってこんなすごい曲を歌ってたんだ……と改めてそのクオリティの高さに驚かされてしまった。
何度も聴いてきた楽曲も新鮮な驚きをもって楽しむことができたので、これまでCD音源しか聴いたことがない人は、ぜひApple Musicでドルビーアトモス版も聴き比べてほしい。 このドルビーアトモス版については、Apple Music内のラジオ番組「J-Pop Now Radio」でキンプリの2人が実際に聴いた感想なども語っているので、あわせてチェックするとよいだろう。 このほか、宇多田ヒカルの「Automatic」や、ジャズ・クラシックの楽曲なども試聴したが、いずれも音の広がりが自然で別次元のクオリティに仕上がっていると感じた。音楽視聴時にステレオかドルビーアトモスか選べるのなら、ドルビーアトモス一択だ。 なお、ドルビーアトモスなどの立体音響を楽しむ方法は、現在は音楽ストリーミング配信やネット動画サービス、もしくはブルーレイディスクに限られており、再生機器もそれらに対応している必要がある。Apple Musicで空間オーディオを楽しむためには、AirPodsやBeatsのイヤホンなどの空間オーディオ対応機器を用意する必要があり、誰もが気軽に楽しめる環境にあるとはまだ言いにくい。しかし通常のステレオ再生の違いは明白で、いずれ対応サービスや機器も増えていくだろう。 ■音楽シーンは立体音響で次の次元へ 今回、ユニバーサルミュージックジャパンの新スタジオを見学して、なぜキンプリがサブスク配信にあたりドルビーアトモス版を制作したのか、その理由が垣間見えた気がした。世界的に主流になりつつある立体音響への対応は日本のミュージックシーンにとっても急務であり、日本の音楽が海外進出を果たすためにも欠かせない要素となっている。ユニバーサルのように世界規模で展開している企業なら、なおさらだろう。 また、新たに制作される曲だけでなく、過去の楽曲もミックスダウンをやり直すことで立体音源に対応できることがわかり、その違いも非常にわかりやすかったので、ハイレゾ音源以上に一般に受け入れられるポテンシャルがありそうだ。 再生環境のアップデートが必要ではあるものの、ドルビーアトモスが新しいスタンダードになる日も近いかもしれない。まずはキンプリファンは、Apple Musicでドルビーアトモス版を聴いてみることをオススメしたい。
■ 一條徹 いちじょうとおる オーディオ・ビジュアル専門メディアやモノ情報誌の編集者の経歴を生かし、オーディオやデジタルガジェットなど幅広い分野で記事を執筆。趣味は洗濯で、プロ顔負けの洗濯技術を発信するランドリースペシャリストとしても活動している。
一條徹