スーパーマラドーナ武智「くすぶりの狂騒曲」鑑賞、痛いほど身に染みたタモンズの葛藤
12月13日に全国公開された映画「くすぶりの狂騒曲」は、実存するお笑いユニット・大宮セブンを題材にした群像劇。「島流し」と揶揄されながらも成功を夢見て奮闘する大宮セブン(囲碁将棋、マヂカルラブリー、タモンズ、GAG、すゑひろがりず、ジェラードン)の真実に迫りながら、中でも飛躍のきっかけを掴めずにいたタモンズが「M-1グランプリ」ラストイヤーに挑む姿を描いている。 【画像】「くすぶりの狂騒曲」場面写真(他12件) 同じく「M-1グランプリ」に心血を注いできた芸人は同作を観て何を感じるのか? 4度の決勝進出を果たすも惜しくも優勝には手が届かなかったスーパーマラドーナ武智を書き手に迎え、感想を綴ってもらった。 文 / スーパーマラドーナ武智 ■ 笑いを商売にして、一生やっていくってどういうことなんだろう スーパーマラドーナ武智といいます。今日は吉本の劇場、大宮を舞台にした映画「くすぶりの狂騒曲」を見た感想や思いなどなど書かせてもらえたらなと思います。 ほぼほぼ主役はタモンズ、、いやタモンズの大波が主役のモデルとなっていました。見終わった率直な感想としては、本当に芸人の裏の姿、裏の生活が心に突き刺さる程リアルに描かれていて、関西の隅っこで細々と漫才してる僕としても決して人ごとではない気持ち、重なる部分が多過ぎて見入ってしまいました。 当時泣かず飛ばずの芸人達がほぼ島流しのごとく行かされた大宮の劇場。そこで、後に大人気となる大宮セブンと言われる芸人達の、苦悩と挫折、諦めや腐り、そして奮闘と生き様がほぼノンフィクションで描かれていました。 その中でもこのお話の中心にいたのがタモンズ。 若手でもないベテランでもない中堅芸人にしか分からない悩み、どんどん周りに置いていかれるような恐怖感、先が見えない毎日、どんなに足掻きどんなに頑張っても変わらない景色、、自分は、自分達はこのままいいのかという疑心暗鬼な気持ちが、僕としては痛いほど身に染みました。特に、ボケ担当の安部はそんな売れない状況の中、妻も子供もいる。。これは苦しいです。僕もM-1に行く前は全く同じ状況でした。笑顔で寄ってくる子供の顔を見るのが辛かったのを思い出しました。そして、ネタ担当の大波の焦り。自分がコンビのネタの責任者であるという立場。このままではいけない、でも今までの自分を否定もしたくない。もっと他に負けない面白いネタが書きたい。同じネタ作りしているツッコミとして大波の辛さも伝わってきて何とも言えない気持ちになりました。 でも、タモンズ、大宮セブンのメンバーや僕に限らず、今まで何百何千何万のどれだけの芸人が同じ思いをし、もがいて足掻いて、結局辞めたり、それでもしがみついて続けてたり、、1コンビ1コンビそれぞれにドラマがあるよなって思ったり。 笑いを商売にして、一生やっていくってどういうことなんだろうと改めて考えさせられる作品でした。 でもきっと、それはお笑いだけじゃなくてどんな職業でも色んな挫折や壁、どうしようもできない無力さや情けなさ。。達成した時の喜び、同じだろうなと思います。だからこそ、生きている人達みんながどこかしら共感できるこの「くすぶりの狂騒曲」を一度見て欲しいなって思います。 ■ 武智(タケチ) 1978年8月3日生まれ、愛媛県出身。大阪NSC22期の同期だった田中一彦と2003年に「マラドーナ」を結成。2007年に一度解散した後、2008年に「スーパーマラドーナ」として再結成した。2012年に「THE MANZAI 2012」で決勝進出。「M-1グランプリ」では2015年から2018年まで4年連続で決勝に進出し、最高順位は2016年の3位。「M-1グランプリ」を誰よりも愛する「Mおじ」として知られ、YouTubeチャンネル「スーパーマラドーナ劇場」では賞レースについて熱く語る動画が人気を博している。吉本興業所属。 ■ 映画「くすぶりの狂騒曲」 2024年12月13日(金)新宿バルト9、イオンシネマほか全国ロードショー <出演者> 和田正人 / 駒木根隆介 辻凪子 / 土屋佑壱 / 永瀬未留 / チュートリアル徳井 / 岡田義徳 ほか