過去最高の配当と自社株買い、調整寸前の日本株救う-業績失望も緩和
(ブルームバーグ): 日本企業が過去最高ペースの増配と自社株買いを実施する方針を示し、調整寸前だった株式市場を下支えしている。
岡三証券の松本史雄チーフストラテジストによると、10日までに決算を発表した企業のうち、53%が今期の増配を計画しているという。自社株買いの発表も過去最高の多さだ。
上場企業が株主還元に積極的な背景の一つには、東京証券取引所が昨春以降、資本効率とバリュエーションを改善するよう企業に対し圧力をかけていることがある。為替相場や国内外金利の先行き不透明感などを材料に、東証株価指数(TOPIX)は3月に付けた高値から一時10%近く調整したものの、増配や自社株買いの動きは4月後半以降に相場が持ち直すきっかけになった。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストは「企業は行動を起こしており、投資家はそれを歓迎している」とみている。
ゴールドマン・サックス・グループのまとめによると、日本企業は4月に総額1兆2000億円の自社株買いを発表。その中には大手商社の伊藤忠商事も含まれる。伊藤忠は2024年度に約1500億円の自社株買いを実施すると発表し、株価は急上昇した。三井不動産や日立製作所の株価も自社株買いの発表後に上げた。
伊藤忠は今年度に自己株取得約1500億円、純利益8800億円目指す
ゴールドマンのチーフ日本株ストラテジストであるブルース・カーク氏は、4月の状況は「25年3月期が自社株買い発表の記録的な年となる可能性を示唆している」とリポートで指摘した。
相次ぐ株主還元策の発表は、企業の慎重な今期業績計画に対する株式市場の失望を一部で相殺した。SMBC日興証券によると、TOPIXベースの今期純利益計画はわずか0.8%の増加にとどまると予想している。ただし、日本の企業は期初に慎重な計画を発表する傾向があり、多くの投資家は今後の上方修正を期待している。