この大会だけしか見ていなかった。白井空良が悲願の世界選手権初タイトル「ワールドスケートボードストリート世界選手権2023東京」男子決勝
【ラン1本目】
過去の大会を分析すると、ラン1本目で高得点を残す選手ほど比較的にその後も自分たちの有利な展開に持っていき好成績を残している印象なのだが、今大会もその傾向が見られた。ラン2本目のうちの良い方のスコアが採用されるオリンピックルールにおいては、決勝にてランセクションでかかる選手へのプレッシャーは計り知れないだろう。ここでその精神状態を上向きにする80点台後半の高得点を残したのは白井空良と根附海龍だった。 自分より先に日本のエースの堀米雄斗や準決勝で素晴らしい滑りを見せたカナダのコルダーノ・ラッセルが81点台を残し、ベーススコアを作り上げる一方でその得点を上回ってプレッシャーをかけたのは根附海龍。準々決勝を1位通過するなど今大会にしっかり照準を合わせてきた根附は、決勝ラン1本目から「ビックスピンフロントボードスライドフェイキー」や、女子では西矢が得意としている「バックサイドクルックドグラインド to ノーリーヒールフリップアウト」や「ヒールフリップバックサイドリップスライド」を綺麗にメイクし86.97ptと決勝ラン最高得点をマークした。 その後なかなか後続選手たちが高得点を残せない中、根附の得点に迫るスコアを残したのは白井空良。ラン前は緊張した面持ちだったが、彼の得意トリックの一つである「フロントサイドシュガーケーングラインド」をハンドレールでメイクしランをスタートさせると、バンク to バンクでの「トレフリップ」や「フロントサイド270フロントサイドリップスライド」、最後は「キャバレリアルバックサイドテールスライド to フェイキー」など高難度トリックを決めた。フルメイクでランを終えるとその顔は笑顔で溢れており、白井が自分のゾーンに入っていくような片鱗を見せた。
【ラン2本目】
ラン2本目では全体的に1本目の得点を上回れずスコアを伸ばせない選手が多い中、1本目の白井や根附に迫る高得点をマークしたのは堀米と小野寺だった。このラン2本の時点で個人的には東京というホームグラウンドでなんとか良い結果を残したいという思いから、良い流れでベストトリックに繋ぎたいという日本人選手たちに宿っていた熱いものを感じる部分もあった。 まず順調にランをアップデートして2本目で得点を伸ばしたのは、「SLS TOKYO」や 「X GAMES CALIFORNIA 2023」で優勝を果たしたものの、まだパリオリンピック予選大会では白星を上げられていない堀米雄斗。2本目では「ノーリー270スイッチバックサイドリップスライド」や「ノーリーヒールフリップバックサイドボードスライド」、「ノーリー270フロントサイドボードスライド」など、得意のノーリーと270をベースとしたトリックでランをフルメイクで終えるとベストスコアを84.62ptへ引き上げた。過去のワールドスケートボーディングツアー(WST)でまだ表彰台に上がれていない彼はまた特別な思いでこの決勝に挑んでいるのがランから垣間見れた。 また1本目のミスを大きく改善してベストトリックに良い流れで繋いだのは、今年の2月開催された2022年度の世界選手権では3位入賞し、先日の全日本選手権で優勝して弱冠13際でありながらも世界トップスケーターとして評価されている小野寺吟雲。他の選手より対空時間が長いのではないかと錯覚させるほど様々なトリックを1本にまとめてくるのが特徴の彼は、ラン1本目ではトリックのランディングにミスし転倒。得点を伸ばせないでいたが2本目では「フロントサイドブラントスライド to ショービットアウト」や「トレフリップフロントサイドボードスライドフェイキー」などを取り入れたランをフルメイクでまとめて83.25ptとして、決めた瞬間は天に両腕の突き上げて喜ぶ様子も見られた。