イスラエル・ハマス戦争開始から半年…アメリカの怒りを買ってもなおネタニヤフ首相が「ラファ地上侵攻」を諦めない理由
昨年10月7日のハマスのテロから半年が経った。イスラエルの報復は続き、停戦の見通しはまだ立たない。ハマス殲滅というネタニヤフ首相の目標は変わっていない。人質もまだ全員は解放されていない。ガザでは3万3千人以上が犠牲になっている。これから、この戦争はどのように展開していくのかーー。 【写真】急速に進む「イランの核開発」が成功したとき、世界が直面する危機
シリアのイラン大使館を攻撃
これまでの四次にわたる中東戦争のうち、二、三、四次は短期間で停戦に持ち込んでいる。第二次中東戦争は、1956年10月29日に始まり、11月に停戦した。第三次中東戦争の勃発は1967年6月5日であるが、この戦争は6日間で終わり、「6日戦争」と呼ばれる。第四次中東戦争は、1973年10月6日~10月22日の間続いた。 1948年5月14日のイスラエル建国に反対して、翌日にアラブ諸国が起こした第一次中東戦争は、翌年6月まで続いた。今回の戦争は、これと同様に長期化している。 4月1日、イスラエルが、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺を空爆した。この結果、イランの革命防衛隊で国外特殊任務に当たるコッズ部隊の司令官モハンマドレザ・ザヘディ准将ら7人と民間人6人が死亡した。 殺害された隊員たちは、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに武器や資金を援助する役割を果たしていた。イスラエルは、この半年間にシリア国内のヒズボラ関連施設を攻撃し、革命防衛隊員を殺害しているが、今回も、イスラエルの諜報機関がザヘディらの所在を確認した上で、ミサイル攻撃を行ったのである。 イランは、領事館への攻撃だと批判しているが、イスラエルは民間の施設だと主張している。イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は、「邪悪な政権は罰せられるであろう。罪を犯したことを後悔させる」と、イスラエルに対する報復を宣言している。イランは、ヒズボラやイエメンのフーシ派を支援しており、戦火が中東全域に拡大することが懸念される。 イランは、直接自らがイスラエルを反撃することは、これまでも避けてきたし、今回もその方針を貫くであろう。しかし、ヒズボラなどを通じてイスラエルを攻撃する可能性はあり、そうなった場合にはハマスよりも強力に武装をしているヒズボラとイスラエルの戦闘の拡大が懸念される。 イラクやシリアに駐留する米軍への攻撃も予想されており、米軍は厳戒態勢を敷いている。また、世界中にあるイスラエル大使館などの外交施設も攻撃に備えている。 そのような中で、7日、イスラエル軍はガザ南部のハンユニスから1旅団を除いて地上部隊を撤退させたと発表した。それは、ハマス壊滅という目的を8割方達成した状況下で、兵士の休養と部隊の再編成を行うためである。ただ、ラファへの攻撃の準備だという観測もある。 また、イランからの攻撃に備えるための、軍の配置転換という狙いもあるようである。しかし、その後もガザ各地でイスラエルによる空爆は続いている。 部隊撤退はアメリカの圧力やイスラエル国内におけるネタニヤフ首相批判の高まりが背景にあるという指摘もある。