通園バスの置き去り防止装置 設置義務化から1年 介護や学習塾へ広がり 乗用車への設置も
幼稚園などの通園に使う送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置の設置が、昨年4月に義務化されてから1年が経過した。電機メーカー各社は、培ってきた技術を活用して置き去り検知装置の製品化を推進。介護向けや学習塾向けなど他分野での採用にも広がりつつある。新たな需要の獲得を目指す動きが活発になってきた。 【関連写真】学習塾などでのニーズも出てきたカナック企画のバス置き去り防止安全装置 国は、2022年10月に「こどものバス送迎・安全徹底プラン」を策定し、安全装置の装備の義務付けなどを盛り込んだ。安全装置は、置き去りにされた子どもがいないか運転手などが降車時に確認して操作するタイプと、エンジン停止から一定時間後にカメラなどで社内を確認する自動検知タイプが要件を満たすものとして定義づけられている。昨年4月に1年間の経過措置期間を設定し、安全装置の設置義務化がスタートした。 パイオニアは、会話型ナビゲーションとドライブレコーダーを組み合わせた「NP1」の特別仕様モデルが送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置に認定されている。セキュリティー監視機能を核に、車内への置き去りを防止する「降車時確認機能」と「自動検知機能」を新たに搭載したモデルだ。 同機と独自開発のホーン、確認用のスイッチ、アプリを組み合わせたシステムには、車のエンジンを切ると音声で確認を促す機能を装備。NP1に搭載しているカメラなどで乗員を検知した場合、アプリやホーンで注意を促す。 カナック企画(東京都葛飾区)は昨年、車内の置き去り対策に有効な「バス置き去り防止安全装置みーつけた BA-001」を発売した。メインユニット、警報ユニット、表示ユニットなどで構成されており、これらを接続用ケーブルでつなぐだけで簡単に施工できる。 エンジンを停止すると、バス最後尾に取り付けた警報ユニットから警報音が流れ出すため、運転手は乗員(園児)を確認しながらバス後部まで移動。最後尾にある警報ユニットのボタンを押して警報音を止める仕組みだ。警報装置が未解除の場合には10分後に警報音から車両ホーン音に切り替わり、周囲へ置き去りの可能性があることを知らせる。 バスだけでなく乗用車に取り付ける動きも出てきた。村田製作所は、車内での幼児置き去り事故を防止するWi-Fiを活用した車内置き去り検知装置を開発した。Wi-Fiセンシングの仕組みを活用したもので、2台のWi-Fi機器を使い、電波の変位量をモニターして検知するシステム。22年11月から滋賀県野洲市と実証実験を20回行い完成させた。 「送受信機間で複数の経路を通る」「経路間に動くものがあれば検知する」というWi-Fiの特性を生かし、検知システムとして採用。カメラやレーダーで死角になるような条件でも検知できる。バスのエンジン停止から10分後に人物の動きを検知すると、ブザーとメール送信で置き去りを知らせる。 今回の製品は野洲市に寄贈するだけで、一般販売はしない。今後、今回の知見をもとに乗用車への設置を目指すとともに、新たな商材の開発も加速。乗用車でも置き去り検知装置の設置を義務化するよう働き掛ける方針だ。 乗用車への設置に向けた動きも表面化してきた一方、1年間の経過措置期間を経て需要はピークアウトしつつある。「昨年10~12月が需要のピーク」(パイオニア)、「補助金施策などが終了した現在は送迎バス向けなどの需要は落ち着いた」(カナック企画)。 ただ、介護サービスでの受注獲得で実績が出ているほか、学習塾などの送迎バスといった応用展開の可能性も出始めている。各社には既に問い合わせも多数寄せられており、一般車向けを含め、新たな商機をつかむ取り組みが活発になっている。
電波新聞社 報道本部