パリ五輪開幕直前に異例の紛糾…負傷で面会謝絶のJOC山下会長の後任候補にあがる「女性メダリスト」
かねてからJOCは情報収集力に乏しいといわれ、札幌五輪招致でも建前と本音を巧みに使い分ける伏魔殿のIOCに翻弄されて痛い目に遭わされた責任は重い。そんな事情もあり、評議委員会の中では、「このまま会長不在のままで良いのか」と人事にまで話が及んだ。 会長代行の三屋裕子副会長(65)は月に2、3回のペースで面会し「さまざまな指示を受け、十分な職責を果たしている」と答えたが、山下会長の症状は深刻で事実上の面会謝絶が続いているといわれる。山積する問題を病室に持ち込むのはあまりにも酷であり、本当にコミュニケーションがとれているのか、疑問だ。 今年3月、主治医の判断を受けて「山下会長はパリ五輪に行かない」ということを発表した尾縣専務理事は「五輪を控えた時期の体制変更は好ましくない」として会長交代を否定。選手団長は自分が務めるとしている。 30年以上にわたり、JOC取材を続けてきたスポーツライターの津田俊樹氏は「評議委員会は財務運営が適切に行われているかをチェックするとともに、理事と監事を選出・解任する決議ができる最高議決機関です」と前置きして次のように指摘する。 「JOCは今、1989年に日本体育協会(現・日本スポーツ協会)から独立してから最も危機的状況に陥っています。発言した評議員も同じ認識なのでしょう。会長の任期が来年6月まであるからという事なかれ主義、先延ばしの手法はもはや通用しません。 コロナ禍の中、開催された3年前の東京五輪は、大会の直前まで開催の可否を問われ、開催の意義としてさかんに『レガシー』(遺産)という言葉が使われました。日本は27個の金メダルを獲得しましたが、メダリストの名前が浮かんでくるのは数人ではないでしょうか。それほど印象が薄いんです。感染リスクを抑えるために無観客にして開催したものの、結果的にはレガシーは残ったとは言えないのではないでしょうか。そのことが少なからず、五輪に対して抱いていた国民の意識を大きく変えたことは否めないと思います」 7月26日から8月11日まで開催されるパリ五輪は、選手の活躍に期待はあるものの、3年前に開かれた東京五輪後に汚職問題が発覚し、本来、説明責任を果たさなければいけないJOCがその中心的な役割を果たせなかったために、オリンピックそのものやJOCに対する世間の関心は薄くなった。存在感を取り戻すためには、任期にこだわることなく、人事を刷新するのが急務ではないか。 「会長候補には前スポーツ庁長官の鈴木大地氏、現長官の室伏広治氏が横滑りするのも一案でしょう。女性登用の観点からいえば、常務理事の小谷実可子氏がいます。個人的には世界陸連理事で発信力のある有森裕子氏が適任だと思いますが、来年の世界陸上東京大会に向けて奔走しているので無理かもしれません」(津田氏) 任期途中とノンビリ構えている余裕などない。ピンチから脱出するには、山下会長の後任を1日も早く決め、新しいリーダーによる再建が必要なのではないだろうか。
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