全国初、福井県敦賀市が「水素自転車」の走行実証開始へ 脱炭素化取り組み、200ml充填で30~50km走る
福井県敦賀市は、水素で発電する燃料電池(FC)を搭載した「FCアシスト自転車」の走行実証に乗り出す。脱炭素化の取り組みの一環で、市民になじみやすい自転車を活用することで水素エネルギーの浸透を図り、将来的な水素サプライチェーン(供給網)構築を目指す。 【写真】水素をタンクに充填して用いる「水素自転車」 走行実証は、FCアシスト自転車を開発したトヨタ紡織(本社愛知県)、水素関連機器開発のサイテム(同石川県)と連携して実施する。トヨタ紡織によるFCアシスト自転車の走行実証は全国自治体で初の取り組みという。 FCアシスト自転車は電動アシスト自転車と同様、人がペダルをこぐ力をモーターで補助する。600ミリリットルのペットボトルほどの大きさのタンクに200リットルの水素を圧縮して充填すると、通常の電動アシスト自転車と同様に約30~50キロ走行できる。水素の充填時間は20~30分で、電動アシスト自転車に比べて大幅に短い。低圧水素を使うため、高圧の燃料電池車(FCV)のような厳重な管理も不要という。 市はトヨタ紡織から自転車3台の提供を受け、9月1日に開幕する敦賀まつりや、14、15日に開かれる音楽フェス「おぼろっく」でスタッフ移動用に活用して走行データを収集する。10月に敦賀市で開かれる自転車利用環境向上会議や11月の敦賀環境フェアで試乗会や展示を行い、水素活用の可能性を市民らにPRする。来年度以降、シェアサイクルなど観光客らの2次交通ツールとしての活用も模索していく。 市は8月28日、報道陣向けに市役所で試乗会を開いた。開発を担当しているトヨタ紡織電動製品開発部の平田和之部長は「地球温暖化に対する有効な手段として水素が重要なファクターになると考えており、今後必ず水素の時代がやってくる。全国でもいち早く敦賀市民の方に体感いただき『水素シティー』の実現に協力していきたい」と話した。トヨタ紡織は2030年までの製品化を目指している。
福井新聞社