ホンダと日産が経営統合との噂……両社の強みを”モータースポーツの視点”から分析する
■ホンダ、F1で持続可能燃料を実用化
一方でホンダは、電気と並び将来のエネルギー候補と言われる持続可能燃料の分野での研究開発を推し進めている。それもF1を使って。 2026年からF1は、持続可能燃料100%で走らねばならない。この持続可能燃料は、ひらたく言えば、石油由来ではないガソリンを作りましょうということ。具体的には植物や廃棄された食用油などを原料に生み出すこともできるし、水と空気を合成することでも生み出せる(石油は基本的に炭素と水素の化合物なのだ!)。地中深くに埋蔵された炭素を大気中に放出するわけではないので、カーボンニュートラルなのだ。 この持続可能燃料は、エネルギー企業が作るわけだが、自動車メーカーも研究を進めている。そしてホンダは、独自に設計した持続可能燃料をエネルギーメーカーの協力を得て精製。F1で実際に使った実績もある。 本田技術研究所の先進パワーユニット・エネルギー研究所の橋本公太郎博士は、この持続可能燃料について、次のように語る。 「ダイレクト・エアキャプチャーという方法で、空気中のCO2を吸着剤に吸着させて集めて、濃縮されたCO2を作り出します」 「そして水素は水を電気分解して作ります。このCO2と水素を使って燃料を作れば、持続可能燃料になります」 この持続可能燃料がすごいところは、既存のエンジン車でガソリンの代わりにそのまま使えるということ。だから既存の自動車をそのまま使い続けることができるし、ガソリンスタンドなどのインフラも活かせる。 ただネックとなるのは、水素を分解する時に電力が必要だということ。この電力を生み出すのに火力発電をしてしまっては元も子もないから、いかに水力や風力による発電……再生可能電力を確保できるかが鍵になる。 橋本博士は次のように続ける。 「再生可能電力をそのままEVなどで使う方がいいのか、それとも液体燃料を作るために使った方がいいのか、今後どちらかに決まってくると思います」 この持続可能燃料が実現すれば、EVに完全移行……という世の中の流れが変わるかもしれない。現在でも、すでにEVの普及スピードは減速しつつあると言われていて、その代替として、あるいはEVに完全移行するまでの繋ぎとして、持続可能燃料には大きな期待が寄せられている。