目が不自由でも自分で料理を作りたい―全盲者が「おせち」作り さいたまでNPOが料理教室 盛り付ける料理の配置は時計の針の方向で指示 講師らのかけ声と参加者の笑い声が絶えず、会場は終始、明るい雰囲気に
目が不自由でも自分で料理を作りたい―。NPO法人「埼玉県視覚障害者社会参加推進協会」(宮城正代表)は、さいたま市浦和区の県障害者交流センターで全盲者のための「おせち料理教室」を初めて開いた。参加者らはマンツーマンで講師らに指導を受け、紅白なますや田作り(ごまめ)、栗きんとん、たたきごぼうなどを仕上げて盛り付けた。 心はいつもバリアフリー…「全盲の教師」新井淑則さん死去 教員仲間ら、遺志継ぎ交流広場「リルの家」開設へ
コトンコトン。包丁でまな板をたたくリズムカルな音が響く。左手でゴボウの長さを測りながらスムーズにカット。包丁の背に人さし指を添えて、ダイコンやニンジンの千切りも楽々とこなす。円筒の計量スプーンと指先の感覚で、砂糖、塩、酢などを量って味付け。フライパンを使った調理では、右手で食材をかき混ぜつつ、位置関係を確かめるため、左手でフライパンの縁に触れていた。 盛り付ける料理の配置は、4時、7時など時計の針の方向で指示。「上手、上手」「すごくいい感じ」など、講師らのかけ声と参加者の笑い声が絶えず、会場は終始、明るい雰囲気に包まれていた。 主催者で、自身も全盲の宮城好子さん(滑川町在住)は、「私たちは、料理教室に申し込んでも断られ、テレビや動画で学ぶこともできない。家庭でも、危ないからと料理を教えてもらう機会がなかった」と明かす。 志木市から参加した田中玲子さん(62)は、先天的な進行性の目の病気で、30歳後半で全盲になった。一番つらかったのは16歳の時、医師から「将来、見えなくなります」と告げられたこと。「鏡に映った自分の顔が見られなくなる、いろいろな色柄の洋服を着ても自分で見ることができなくなるのかと想像するだけで、ものすごくショックだった」と振り返った。
「一番難しいのは、盛り付け。皿から料理がはみ出たり、配置のバランスが分からない。盛り付けができないと、自信を持って他の人におもてなしができない」と語った。家で料理する時も包丁で手を切ることはないが、軽いやけどはしょっちゅうだという。「食器や包丁などの場所が移動されると全く分からなくなってしまう。善意でも整理されると困る」と笑い、家でも早速作りたいと声を弾ませた。宮城さんは「今後も続けていきたい」と話していた。