「患者さんが亡くなっているんです」キャリアを棒に振った製薬会社の公益通報者が署名活動を続ける訳
「正しいことをしたはずなのに」…
企業の不正について公益通報した後、仕事を干されるなどの不当な扱いを受け、訴訟を行っているX(旧Twitter)アカウント名「小林まる」さん。 「家族に誇れる会社で働きたい」…伊藤忠のイスラエルへの協力にNOを突きつけた! ある社員の思い 事の発端は、小林さんが入社直後に、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を適応とする薬「ソリリス」に関する不正に気づいたこと。小林さんは上司に報告・相談、内部通報したが、パワハラを受け、退職勧奨される。そこから事態は悪化していく。 ◆同僚は…降級した上での配置転換や退職干渉で、声を上げられない雰囲気に まるで映画やドラマのような悲惨な話だが、同僚などに相談してみんなで闘うという選択肢はなかったのだろうかと聞くと、小林さんはこう説明する。 「学会からの注意喚起が’14年に出た時点で、社内のMCCにはそれを重く受け止め、団結しようと言って、MCCの会を作ろうとした人もいました。 でも、会社はそれを組合潰しのような感じで潰したんです。顧客から批判を受けていると会議で発言した人も、適応外使用にエビデンスはあるのかと声を上げた人も会社に退職勧奨され、今は会社にいません。会社は、9等級の社員を8等級に降級の上で、PMS専任部署に配置転換しましたので、会社のすることに反対でも声を上げられない雰囲気になりました。 それでも、皆さんご家族もあって、それぞれの生活がある中で、私のために共通の上司に、私を元のMCC職に戻すよう進言してくれた社員もいました。それは本当にありがたいと思っています」 あまりに個人が負うリスクが大きすぎるが、匿名での通報をしようとは思わなかったのかと聞くと。 「私は先に内部通報してしまったので、会社からは厚生労働省に通報したのが私だということはすぐ推測がつく状態でした。 逆に言えば、私が会社に内部通報し、米国親会社にも内部通報したのだから、厚生労働省に通報したのも私だということは、会社にも容易に想像がつくはずなのに、裁判所の判断は『配転が通報の報復という証拠がないとダメ』ということでした。 そもそも不正をするような会社が、『あなたは公益通報したから追い出し部屋に行け』なんて言うはずはないですよね。そんな証拠があるわけはないのに」 では、匿名でメディアへのリークを考えたことは? 「報道機関に通報しても、報道されないこともありますし、会社が気にしない場合もあります。 例えば飲料メーカーなど、一般消費者をビジネスターゲットとするBtoCマーケティングの場合、報道によって不買運動が起きるなど、企業にとってダメージになりますが、アレクシオンの顧客は病院でBtoBのため、報道があってもそれほど気にしない面があるんです。 実際、1月の仕事干しの提訴時にアレクシオンの不正についても、業界紙3紙と朝日新聞香川県版と瀬戸内海放送で報道されましたが、会社内部では第1クォーターの業績として『我が社のレペテーションは向上している』と発表しています」