長距離搬送や飛行時間増 奄美ドクヘリ運航調整委 民間との連携、遠隔医療支援も提案
奄美ドクターヘリ運航調整委員会の2024年度会合は11日、鹿児島県奄美市名瀬の県立大島病院救命救急センターであった。23年度の出動件数は349件(前年度232件)と急増。総飛行時間も約405時間(同約328時間)で全国平均の約216時間と比べても長く、県本土や沖縄への長距離搬送が約7割を占めた。運航会社からは24年に入り機体の不具合発生が増えているとの報告もあり、「限られた予算でいかに事業を維持、継続できるか。未来を見据え、県、行政主体の会議体設置や事業検討を」「奄美12市町村で課題を共有し、議論を進めたい」などの声が上がった。 奄美ドクターヘリの活動範囲は基地病院である県立大島病院から半径約200キロに及ぶ奄美地域と十島村。片道約400キロの鹿児島市への施設間輸送も担うなど、広範囲に及ぶ。 委員会では23年度出動実績報告書を承認。報告書によると、運航日数366日間における23年度の奄美ドクターヘリ運航は終日運航が352日。機体不具合などを原因とする一部運休が7日、台風退避による終日運休7日だった。要請件数は474件(前年度362件)で、うち不出動は125件。出動件数349件の内訳は現場出動141件、施設間搬送168件、出動後キャンセル40件。 患者の搬送人数は293人。搬送先は群島内が210人で、群島外は県本土が69人、沖縄が14人。疾患別では外傷が51人、心大血管疾患が60人、脳疾患が46人、心肺停止14人、その他(ハブ咬傷、切迫早産など)122人。 県立大島病院の中村健太郎救命救急センター長は「飛行時間増加の背景にはコロナ禍での飛び控えが解消されたこと、可能な限りのニーズに対応したことがあるが、県本土や沖縄への長距離搬送に要した時間が増加したことも一因」と分析。 沖縄県浦添総合病院と進める連携強化や、他県で導入されているICTを活用した遠隔医療システムなどの支援体制を紹介し、県主体に検討を進めることを提案。「救急医療はシステム構築の側面が大きく、公的な立場の力が必要。現場同士のコミュニケーションを築き、連携体制を整えて声を上げていきたい」と話した。
奄美の南海日日新聞