モディ印首相

ロシアを訪問中のインドのモディ首相は23日、「BRICS」首脳会議が開かれている露中部カザンで、中国の習近平国家主席と5年ぶりに会談した。両国は印北部カシミール地方の係争地で起きた軍の衝突で関係が悪化していたが、緊張緩和と関係改善を図った。一方でモディ氏はインドと中露の接近に敏感な米国に配慮する必要もあり、慎重な対応が迫られそうだ。 モディ氏が習氏と会談する背景には、事実上の両国国境にあたる実効支配線（LAC）付近のパトロールの取り決めについて合意に至ったことがある。インド軍と中国軍は2020年の衝突で計24人の死者を出し、にらみ合いが続いていたが、ミスリ印外務次官は今月21日、中国との話し合いの結果、合意に達したと発表。両国軍が撤収し、LAC付近の状況が衝突以前の形に戻ることになるとしていた。 インドは対中関係悪化を受け、直接投資に政府の事前承認を必要とする制度改正を行うなど、経済面でも中国を一定程度、排除してきた。ただ、インドは独立100年を迎える47年の先進国入りを目指しており、中国との経済関係強化を経済成長のテコにしたいとの思惑もある。 もっとも中国は軍事的威圧を強めており、国境問題が解決したわけではない。インド側は中国支配地域側で中国軍が軍施設を着々と建設していることに脅威を感じている。1960年代の中印国境紛争では、インド側は3千人余の死者・行方不明者を出した。 インドにとって気がかりなのは米国など西側諸国の反応だ。 BRICS首脳会議直前の14日、カナダは、昨年6月にインドでのシーク教徒独立運動に関わった男性指導者がカナダ国内で殺害された事件を巡り、印外交官6人の追放を決定した。インドの関与を裏付ける情報は米国から提供されたという。また米国は17日に在ニューヨークのシーク教徒独立運動指導者の殺害を指示したとして元印情報機関員の起訴を発表した。 モディ氏は23日のBRICS首脳会議全体会合で「BRICSは分裂を招くのではなく、人類の利益のために働く組織だ」と述べた。米国の圧力を感じているのは間違いない。（岩田智雄）