大統領選で落選のイ・ジェミョン氏は「民意歪曲」有罪…「ならば当選の尹氏も処罰を」
野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表が公職選挙法違反事件の一審で有罪判決を受け、大きく波紋を広げている。大統領選挙で落選した野党代表のみを狙った検察の執ような捜査が、元検事の大統領と党代表を頂く与党勢力の外郭支援の中で「結実」したものだが、このかん検察は当選者である尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の候補時代の虚偽事実公表容疑には「意見表明に過ぎない」、「虚偽との認識なし」と述べるなど、公職選挙法違反事件の判例などを最大限反映して嫌疑なしとしてきた。 政界と法曹界からは、「民意歪曲」というイ代表の有罪論理に従えば「当選者」である尹大統領の容疑の方がよっぽど重いと指摘する声があがっている。退任後、捜査は避けられないということだ。 「選挙過程で有権者に虚偽事実が公表された場合、有権者が正しい選択をすることができなくなるため、民意が歪曲され、選挙制度の機能と代議制民主主義の本質が損なわれる恐れがあることから、公職選挙法は虚偽事実の公表を処罰している。被告人は国家元首である大統領を選出する選挙で虚偽事実を公表したため、罪責が軽いとは言えない」 ソウル中央地裁刑事34部(ハン・ソンジン裁判長)は今月15日、イ代表に執行猶予つきの懲役刑を言い渡した際、このように述べた。「民意歪曲」は通常、当選者側の違法行為を判断する際の基準だ。虚偽事実を公表した候補が落選したのにそれを「民意が歪曲された」とはみなせないからだ。与野党の政治家を捜査した経験を多く持つ元検事の弁護士は17日、「事実関係の判断はとりあえず置くとして、公職選挙法が保護しようとしている法益や処罰の実益、当選者と落選者との公平性から考えると、納得しがたい量刑理由」だと語った。 選挙の過程における金による民意の歪曲は、当選者か落選者かを区別することなく厳しく処罰するという基調が固まってきている。一方、最高裁判例は「金は縛って口は認める」という公職選挙法の趣旨を生かし、「選挙の公正を理由に不正確な、または望ましくない表現は、すべて重い法的責任を問う」ことに慎重な立場へと変わっている。公的関心事をめぐる攻防と候補者に対する検証が萎縮すること▽捜査権の行使の中立性批判が避けられないこと▽選挙結果が国民ではなく検察や裁判所の判断に左右される恐れがあること、がその理由だ。 検察は、尹大統領の大統領候補時代の虚偽事実公表容疑に対しては、「口は認める」という基準を忠実に適用してきた。尹大統領は法曹記者生活の長いキム・マンベ氏との親交を否定したが、キム氏の姉が尹大統領の父親の家を19億ウォンで購入していたことなどが明らかになっている。検察は2022年9月に「個人的関係や親交の有無は自らの評価ないし意見表現に過ぎない」として不起訴としている。故キム・ムンギ氏のことを「知らない」と言ったイ・ジェミョン代表を起訴した時とは真逆の態度だ。尹大統領が候補時代にキム・ゴンヒ女史の虚偽履歴報道を「明白な誤報」と主張したことについても、「虚偽という認識があったと認められる資料がない」として不起訴としている。 元検事の弁護士は「落選者処罰の実益は当選者処罰の実益より当然ながら小さい。『民意歪曲』、『代議制民主主義の本質が損なわれる』と述べた一審の論理に従えば、当選者である尹錫悦大統領も退任後直ちに捜査して起訴することこそ公平だ」と述べた。 大統領は、在任中は刑事訴追を受けないが、憲法裁判所(全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ))、最高裁判所(李明博(イ・ミョンバク))の判例に則り、公訴時効が停止される。最高裁は、尹大統領が検事時代に起訴した李明博元大統領の判決で、「大統領の公訴時効は退任後に再び進められる」と述べている。 共に民主党は、尹大統領が2021年10月15日に行われた大統領候補党内予備選の討論会で、キム・ゴンヒ女史のドイツモーターズ株価操作疑惑を否定し「4カ月ほど預けたが、損失が出たので返金してもらって絶縁した」と発言したことなどを、虚偽事実公表の疑いでソウル中央地検に告発している。2019年7月の尹錫悦検察総長に対する人事聴聞会で、自由韓国党(現国民の力)が疑惑を提起して以降、検察によって捜査が行われていた状況だったため、「損失が出た」との発言は事前に準備されていた可能性が高い。その後、キム・ゴンヒ、チェ・ウンスン母娘がドイツモーターズへの株式投資で23億ウォンの差益を得ていたことが、検察の捜査によって明らかになっている。 祖国革新党は一審判決直後の論評で、義母のチェ・ウンスン氏についての尹大統領の大統領候補時代の虚偽事実流布の例をあげている。尹大統領は当時「義母は詐欺にあったことはあっても、誰かに10ウォンたりとも被害を与えたことはない」と語ったが、チェ氏は「349億ウォンの通帳残高証明書偽造」で昨年11月、最高裁で有罪が確定している。 イ代表の一審は「大統領選挙で当選できなかったこと」などを、量刑に有利な事情として考慮したと述べている。裏返せば、尹大統領の虚偽事実公表容疑が認められれば、「当選」は量刑の加重理由となる。尹大統領は2022年の大統領選挙の終盤に至るまでキム女史を株価操作疑惑などから防衛することに全力を尽くし、わずか0.73ポイント差で当選している。 キム・ナミル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )