空き家の相談・管理業務に報酬、国土交通省が初めてガイドライン作成で明記…不動産業者の参入促す
管理が行き届いていない空き家が増えていることから、国土交通省は、不動産業者に「空き家管理業」に参入してもらうための取り組みを強化する。国として初となる空き家管理業に関するガイドライン(手引)を作成。報酬や管理上の注意点を明示することで、参入を促す狙いだ。管理状態にある空き家が増えることで売買、賃貸も活性化し、空き家の劣化防止や利活用にもつながると期待される。
全国の空き家は900万戸(2023年10月、総務省調べ)に上り、このうち居住や使用の目的がない空き家は約4割(385万戸)を占める。中には所有者の管理が行き届かず、劣化が進む物件も増えている。
空き家管理業は、不動産業者などが定期的に訪問し、湿気がこもらないように換気したり、雨漏りがないか点検したりするのが主な業務。除草や庭木の枝切り、台風や大雪後の破損のチェックを請け負うケースもある。
近年は、警備会社やガス会社などが参入しつつあるが、不動産業者の動きは鈍い。国交省が不動産業者を対象に行ったアンケート調査(22年)では、回答した3990社のうち、空き家管理の経験があるのは27%(1083社)に上ったが、管理業を継続しているのは9%(379社)にとどまった。このうち3分の1は、無償で管理を引き受けていた。
管理を巡るトラブルも少なくない。23年の別の調査では、業者に管理を依頼した空き家所有者161人の約2割が「家具や家電がなくなった」「追加の修繕が必要となった」などのトラブルを経験していた。
国交省は、空き家管理業への参入は、不動産業者にとっても、空き家の管理から売買、賃貸につなげられるメリットがあり、空き家の劣化防止や利活用にもつながると判断。これまで国による統一ルールがなかったことから、報酬や管理上の注意点をガイドラインで示すことにした。
報酬については、不動産取引で得られる「仲介報酬」とは別に、空き家に関する相談・管理業務でも制限なく得られると明記。管理上の注意点として▽貴重品がある場合は所有者に前もって持ち出してもらう▽所有者への報告は口頭や書面だけでなく写真を使う▽契約時に損害賠償責任の範囲を決める――などを示す。
国交省幹部は「地域の空き家事情に詳しい不動産業者らに多く参入してもらい、売買や利活用も広がれば」としている。