親の認知症が進んでも「成年後見制度」を依頼すれば預金を払い出せるそうですが、何か注意すべき点があるのでしょうか?
成年後見制度を利用する際の注意点
成年後見制度を利用する際の注意点について紹介します。 まず、成年後見制度を利用すると、親の意思が反映されにくくなる可能性があります。後見人が財産の管理を行うので、日常生活費を除く大きな支出については後見人の判断が重要になります。 例えば、親が子どもに資金的な援助をしたいと思っても、後見人が本人のためにならないと判断した場合は認められないことがあります。この点については、親の希望や価値観を尊重する人を後見人の候補として選ぶことで軽減できる可能性があります。 親にまだ十分な認知能力がある段階であれば、子どもに生前贈与をする、アパートなどの収益不動産については家族信託(保有する不動産などの資産を信頼できる家族に託し、その管理や処分を任せる契約)を利用するなど、その他の手段も併せて考えるといいでしょう。 次に費用の問題が挙げられます。後見人には手数料が発生する場合があります。所有している財産が多い場合は弁護士など専門家が後見人になるケースがあり、財産額に応じた手数料が定期的に親の財産から差し引かれることになります。 成年後見制度の利用を開始すると、原則として途中で止めることができず、親が亡くなるまで手数料の支払いが続く点にも注意しましょう。また、成年後見制度を利用するための手続きにも時間がかかります。 成年後見制度の利用には、家庭裁判所での申し立てが必要になります。申し立てから後見人が選定されるまでの手続きに数ヶ月を要することもあるため、親の認知症が急速に進行する可能性を考えた場合は早めの対応が必要かもしれません。
まとめ
認知症を患っている親がいる子どもにとって、親の財産の管理、契約行為について法的な保護や援助を受けられる成年後見制度はメリットがある手段の1つです。 ただし、本人のためと認められない理由で預金を引き出すことはできない点、弁護士などの専門家が後見人になると定期的に手数料が発生する点、制度の利用開始までの手続きに時間がかかる点などにあらかじめ注意してください。 成年後見制度の利用に当たって不明点がある場合は、弁護士や司法書士、行政書士など専門家のアドバイスを受けながら手続きを進めるといいでしょう。 出典 法務省 成年後見制度・成年後見登記制度 裁判所 成年後見制度について 執筆者:伊達寿和 CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員
ファイナンシャルフィールド編集部