打撃力は創成館に分 平田は接戦に勝機 好投手擁する両チーム 第2日第2試合
2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)が8月10日から、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われる。11日の第2試合で対戦する創成館(長崎)と平田(島根)の見どころや両チームの戦力、学校紹介、応援メッセージを紹介する。※全国大会出場回数は今春のセンバツを含む 【写真特集】平田野球部の「お兄ちゃん」地元の子らと触れ合い ◇平田はエースの出来がカギ 創成館は大胆な攻撃も 創成館、平田ともに投手を中心とした「守りの野球」を持ち味にする。一方で2019年秋の公式戦のチーム打率は平田の2割4分6厘に対し、2割9分5厘と上回る創成館が打力で優位に立つ。創成館打線を平田のエース右腕・古川雅也がどこまで抑えられるかが鍵を握る。 創成館は長打力のある猿渡颯を軸に、二、三塁からヒットエンドランを仕掛けるなど攻撃に大胆さも備える。平田の古川は多彩な変化球や緩急を織り交ぜながら打たせて取る投球が身上だけに、相手が機動力で揺さぶってきた時に冷静に対処できるかがポイント。守備では球種や打者の癖を見ながら打球方向を予測するのが特徴だ。 創成館のエース左腕・白水巧は精度の高いチェンジアップで緩急を使い、投球に安定感がある。控え投手も枚数がそろい、守備も19年秋の公式戦の平均失策数0.11は出場校中2位。平田は俊足でミート力がある1番の保科陽太がチャンスを作り、中軸の坂田大輝らが還すのが得点パターンとなる。 平田は19年秋の公式戦5勝のうち、4勝が2点差以内と競り合いを制してきた。先取点を奪って接戦に持ち込めば、勝機が見える。【新井隆一】 ◇「苦戦しても敗戦しない」部訓掲げる創成館 苦戦しても敗戦しない――。創成館は部訓通りの粘り強いプレーで、昨秋の九州大会で4強入りを果たした。 チーム最大の持ち味は「堅守」だ。昨秋の県大会、九州大会は計9試合でわずか1失策。稙田(わさだ)龍生監督も「上出来だった」と満足の表情で大会を終えた。 多彩な投手陣による継投策が武器だ。九州大会は、主戦の左腕・白水巧(3年)を軸に継投で勝ち進んだ。強力打線を誇る明豊(大分)との準決勝は2―3で敗れたものの、粘投と3併殺を奪う「攻めの守備」を見せ、得意とするロースコアの接戦に持ち込んだ。 「課題は打撃力」と口をそろえる選手たちだが、準々決勝では松永知大(2年)がサヨナラ適時二塁打を放つなど、好機での勝負強さを印象づけた。 3月、センバツ中止決定の知らせに泣き崩れた選手たち。モチベーションの低下から、一時は全体練習を中止したほどだった。それだけに、センバツ交流試合の開催が決まった瞬間はグラウンドで喜びを爆発させた。稙田監督も「何試合分もの価値がある1試合にしてほしい」と選手たちを鼓舞した。 「甲子園という夢舞台で、最後にみんなと野球を楽しみたい」と白水が言えば、主将の上原祐士(3年)は「憧れの舞台で最高のプレーをしたい。あくまで勝ちにこだわる」と必勝を誓う。 校内の寮で共同生活を送る選手らは、全体練習が終わった後も素振りなど自主練習に励み、打撃力の向上に余念がない。 昨秋の公式戦で4割4分4厘、九州大会でも5割超の打率を残した猿渡颯(3年)は「2年半の集大成の場で必ずホームランを打ってみせる」と意気込む。【中山敦貴】 ◇創成館・上原祐士主将の話 (対戦相手の平田は)良い投手がいて守備が堅い。(練習再開後は)モチベーションが上がり、体も気持ちも良い状態。甲子園で試合ができるのは限られたチームだけ。全力でプレーしたい。 ◇18年春8強 阪神・川原は学校初のプロ選手 1962年、長崎市で九州経営学園として創立。88年に諫早市に移転し、現校名となった。普通科とデザイン科があり、体操部や吹奏楽部なども盛ん。甲子園には2013年春に初出場し、18年春の8強が最高。高卒2年目の川原陸投手(阪神)は学校初のプロ野球選手。長崎県諫早市。 ◇「気持ちのこもったプレーを」創成館高校同窓会・内田実さん 選手の皆さん、センバツ交流試合への出場、おめでとうございます。対戦校の平田は創成館と同様、投手を軸とした堅い守りが持ち味と聞きます。カラーの似た両チームがどんな熱戦を繰り広げるのか、本当に楽しみです。 創成館のチームコンセプトは「仲間とは宝」。勝ち負けよりも、一度は消えた甲子園出場の夢がかなうことに感謝し、全員で気持ちのこもった戦いを見せてください。私たちOBも長崎から、声援を送ります。 通常の甲子園にも増して、多くの人が交流試合での戦いぶりに注目しているはずです。九州のチームとして、今回の九州豪雨で被災された方々にも勇気と感動を与えてほしいと思います。 ◇堅実な攻めが身上の平田 昨秋は強豪を撃破 先頭打者の主将、保科陽太(3年)以下、単打や犠打をつなぐ堅実な攻撃スタイルが持ち味だ。昨秋の島根県大会では強豪私学の開星を接戦で降した。県2位で臨んだ中国大会では、エース右腕・古川雅也(3年)が内角低めに球を集め、強打の尾道商(広島)を零封。今春センバツには21世紀枠で選ばれ、春夏通じて初の甲子園出場を決めた。 野球人口減少の危機感から2017年に軟らかいボールとバットを携え、地元の幼児たちに野球の楽しさを伝える「野球体験会」を始め、野球普及班を結成するなど他の模範となる取り組みを続けてきた。 21世紀枠での選出理由の一つになった野球体験会は、新型コロナウイルスの影響を受けて、1月26日を最後に開催できずにいる。普及班班長の坂田大輝(3年)は「(指導した)子供たちがかっこいいと思うようなファインプレーを見せたい」と闘志を燃やす。 センバツ交流試合の開催が決まった6月10日。部OBでもある植田悟監督(48)は「甲子園で校歌を」と書かれたボールを保科に手渡した。センバツ出場決定後から練習で使っていたが、大会中止を受けて封印。その後も部活禁止、さらに夏の甲子園中止と試練が続いた野球部員にとって、希望のボールだ。 植田監督は「県の独自大会を戦いながら最終調整をしたい。苦しんだ分、野球ができる喜びをぶつけてほしい」と話す。その視線の先で、休校による練習の遅れを取り戻そうと、選手たちが必死に白球を追っている。 保科は「(『甲子園で校歌を』の)ボールには地域の人の期待も込められている。練習中に目にすると気合が入る」と言い切る。甲子園に自分たちの確かな足跡を残すつもりだ。【小坂春乃】 ◇平田・保科陽太主将の話 (対戦する創成館は)投打ともにレベルが高い。(練習再開後は)少しずつモチベーションが上がり、みんな頑張っている。甲子園で試合をさせていただくことに感謝して、頑張りたい。 ◇1916年創立 陸上女子は「都大路」常連 1916年に平田農学校として創立。48年に平田農林学校と平田高等女学校を統合して現校名となった。当時は普通科と農業科があったが、現在は普通科のみ。校訓は「自律・協同・創造」。野球部は51年創部。陸上部の女子は全国高校駅伝の常連で、柔道部も全国レベル。島根県出雲市。 ◇「優しいお兄ちゃん」を園児たちと応援 平田保育所の保育士・岡穂南(おか・ほなみ)さん 平田保育所は、選手たちが「野球体験会」を開くために訪ねてくれました。私も平田高出身で、吹奏楽部でした。県大会で野球部をスタンドから応援したこともあります。 体験会で選手たちは子供の目線までかがみ、おもちゃのバットやボールを使って野球を教えてくれました。挑戦心を刺激したらしく、バットを持ち出す園児もいました。園の夏祭りでもバッティングコーナーを設けます。 平高(ひらこう)野球部は地元の自慢です。センバツ出場決定後はお祝いの横断幕が設置され、町は盛り上がっています。練習再開から間もないと思いますが、自分や仲間を信じて大舞台を楽しんで。園児たちも優しい“お兄ちゃん”を応援しています。