あの中学受験問題が小学生向けの算数謎解き小説に!東大卒作家・結城真一郎さんに聞く、計算力と読解力を同時に培うための算数に対する視点とは?
『ハリー・ポッター』も読んでくれた母親の読み聞かせが国語力を育んだ
――お母さまとはどんなかかわり方をしてきましたか? 結城さん:塾の宿題関係はあまりあーだーこーだ言われませんでした。ある程度信用してもらってたとは思いますね。なんで信用されていたかって言ったら、やっぱり僕が開成に行きたいと思って、本気でやろうっていう姿勢だったからかなと。 あとは小さい頃から本の読み聞かせをしてもらっていました。 ――先ほど国語力のお話が出ましたが、読み聞かせが国語力につながったと感じますか? 結城さん: めちゃくちゃ大きいと思います。小さいうちは自分の目で文字を追うのは負担もあって大変だと思うんですけど、読み聞かせは聞いてるだけなので、そんなに苦なくその時間を過ごせますし、聞いたことを脳内で映像に変換するまでを自然にやっていて、そういう発想力が、さっきお話した(算数問題に対する)ツッコミにつながったり、国語が1番得意だったのも読み聞かせの効果のあらわれかなという風に今、思いますね。 小学3年生の頃には、『ハリー・ポッターと賢者の石』を読み聞かせしてもらって。最初はこんなに長いのを読み聞かせされるなんてふざけんじゃねぇよ!くらいに思っていたのが、(聞いていると)おもしろ!ってなって、『秘密の部屋』からは自分で読むようになりました。 ――ご自身で本を読むのも好きでしたか? 結城さん:よく読んでいましたね。『ハリー・ポッター』もそうですし、『ズッコケ三人組』とか『かいけつゾロリ』とか王道系が好きでした。 読書以外では外遊びをすることが多かったです。特に好きだったのは、何人かで近所の下水道の中に懐中電灯を片手に入っていくとか、探検とか、雑木林の中に入って行って秘密基地を作るとか。それが自分のワクワク感の原体験みたいなところかなっていう風に思います。 ――お母さまとは普段から会話も多かったんですか。 結城さん:多かったと思います。もともと母親が記者をやっていたので、言葉にも厳しかったです。 小学3、4年生くらいのとき、授業参観で読書感想文を発表して家に帰ってから「今日の文章は、~と思った。嬉しかった。楽しかった。ばっかりで、何がどうなるかが全く伝わってこない、情景が浮かばない」みたいな厳しいことを言われたり。逆にアサガオの観察日記に、アサガオが何日目かになって枯れ始めて、年老いて、しおれていって、朽ち果てていくように感じたと書いたら、「これをこの歳で書くのがいいね」と褒めてくれたことも。これ以外も普段からとにかくよく喋っていたと思います。 ――先ほど読書の話が出ましたが結城さんが小学生におすすめしたい本を教えてください。 結城さん:一番推すのはやっぱり『ズッコケ三人組』ですね。小学生のわくわく感を一番詰め込んでいる作品だと思います。なかでも『参上!ズッコケ忍者軍団』は、秘密基地を他校の子に取られて、それを奪還するために戦うお話なんですが、秘密基地の攻防をめぐる戦いが見開きで絵になっていて、それを見てやりたいなぁとすごく思って。それもあって秘密基地作りをやってた側面もあります。一方で『花のズッコケ児童会長』は物語としてのオチのクオリティが半端じゃないなって当時から思っていて。こういう決着なんだ!うまいなって感動した記憶が。 いろんなわくわく感、面白さが詰まっていて、視覚的な面白さもあれば、物語としてのオチのつけ方が綺麗みたいな面白さもあって。人によってはハマるものもハマらないものもあるとは思うんですけど、シリーズ通して読んだ時に絶対刺さるものがあるので小学生に推したいですし、僕自身も大好きでいまだに忘れられないです。 結城さんの国語力、さらにはそれを土台にした算数・数学の力を育んだのは、お母様による読み聞かせ。長編小説『ハリーポッター』まで読み聞かせしていたとは驚きです。それが確実に実を結んだことが、結城さんのお話からよく伝わりました。