COP29の焦点「気候変動対策資金」、金融システムにできることとは
11月11日にアゼルバイジャンで開幕した国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)が大詰めを迎えている。COP29の焦点の一つが「気候変動対策資金」だ。化石燃料をフル活用して経済成長を達成してきた先進国が、成長を目指す新興国の気候対策資金の上積みで合意できるかどうかに注目が集まる。 一方、米大統領選挙で勝利したドナルド・トランプ前大統領は11月16日、次期政権のエネルギー長官に、石油や天然ガス採掘企業のCEOで気候変動の否定論者として知られるクリス・ライトをあてるとの人事を発表した。 世界は気候変動対策で一致団結できるのか。そして、GHG(温室効果ガス)排出量削減に向けて金融システムにできることは何か。世界経済フォーラム「金融と通貨システム」部門長でニューヨークオフィスの代表も務めるマシュー・ブレイクに話を聞いた。 マシュー・ブレイク◎世界経済フォーラム「金融と通貨システム」部門長。ニューヨーク連邦準備銀行や投資銀行オッペンハイマーに勤務したのち、フォーラムに参画。フォーラムのニューヨークオフィス代表も務める。 ──世界経済フォーラムが2024年6月に出した『効果的なエネルギー転換の促進2024年報告書』(Fostering Effective Energy Transition 2024)は、より公平かつ安全でサステナブルなエネルギーシステムに転換する勢いが鈍化していると指摘しています。また、GHGの排出量が世界規模で増加しているとのデータもあります。 マシュー・ブレイク(以下、ブレイク):石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料への依存度は依然として高い。日本のエネルギー源の内訳を見ても、化石燃料が全体の8割近くを占める。地球上のGHG排出量を削減するためには、エネルギー転換を着実に推し進めることが不可欠だ。 24年10月にワシントンD.C.で開かれた世界銀行とIMFの合同開発委員会の金融サービス・コミュニティーでは、気候変動対策資金として約130兆ドル相当のコミットメントがあるという話が出た。しかし、エネルギー転換に向けた資金流入という点では、(需要と供給との間に)大きな隔たりがある。特に、水素の活用や炭素の回収、持続可能な航空燃料などの主要技術については資金不足が続いている。 残念ながら私たちは、明かりのスイッチを押せばすぐに化石燃料から非化石燃料に切り替えることができるわけではない。新興国の経済成長やデータセンターの電力使用量の増加などに伴い、必要なエネルギーの量も一層増えることが見込まれる。 ──そんななか、脱炭素社会の実現に向けて長期的な戦略を打ち立て、GHG排出量の削減に取り組む企業を支援する新たなファイナンスの手法「トランジション・ファイナンス」に期待が寄せられています。 ブレイク:金融業界のリーダーの多くが、トランジション・ファイナンスを世界経済の長期的な構造変化と捉えている。人類にとって、またさまざまなセクターにとっても、トランジション・ファイナンスは持続可能な未来に移行するための最大のチャンスのひとつだと言われている。