COP29の焦点「気候変動対策資金」、金融システムにできることとは
日本ではエネルギー転換と、より広範な経済転換の要素を組み合わせることが不可欠
──日本では23年に「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(GX推進法)が成立し、24年2月には「脱炭素成長型経済構造移行債」(GX経済移行債)が発行されました。 ブレイク:日本の場合、エネルギー転換と、より広範な経済転換の要素を組み合わせて考えることが不可欠だ。 日本政府のGX(グリーントランスフォーメーション)への移行方針では、再生可能エネルギーを増やすことや、水素や炭素回収などの新技術への支援を明示している。国内の主要な関係者や金融機関、産業界が協調して調整を進めることにもコミットメントしている。 なかでも非常に興味深いのが、エネルギー転換を推進するためのファイナンスの手法だ。世界初の政府によるトランジション・ボンドとして、10年間で20兆円規模のGX経済移行債の発行を見込んでいると聞く。さらに、エネルギー転換に必要な資金の一部は多方面と協調しながら調達し、より広範な企業にインセンティブを与えることができる方法を示している。GXの戦略や財務面を調整する専門機関も設けている。世界的に見ても非常にユニークかつ魅力的な取り組みだ。 ──日本はトランジション・ファイナンスの分野でアジア太平洋地域(APAC)におけるロールモデルになり得ると思いますか。 ブレイク:そうなることを期待している。アジア経済圏の炭素集約度(エネルギー消費量単位あたりの二酸化炭素排出量)は非常に高い。もし日本が、ネットゼロが困難な産業分野の技術革新に資金を供給するためのスケーラブルなモデルを開発・実装することができれば、そのアプローチは近隣諸国に輸出できる。 また、エネルギーの課題解決の鍵を握るのはイノベーションだ。日本は技術革新に力を入れているので、私は(日本がAPACのロールモデルになることについて)楽観的でありたい。 ──日本政府はGX推進の柱のひとつに原子力を掲げています。11月には宮城県にある女川原子力発電所2号機を再稼働しました。原発については賛否両論がありますが、エネルギー転換における原発の必要性についてどうお考えですか。 ブレイク:原発への関心は世界的にも非常に高まっている。現在、世界中で60基前後が開発中であり、さらに100基が認可待ちの状況だと聞く。 地球の寿命やエネルギー生産の安定性を考慮すると、原発はエネルギー効率がよく経済的なメリットも大きい。再生可能エネルギーの場合、例えば風力発電なら風が吹かなければエネルギーを十分に供給できない。一方、原子力は自然環境に左右されることなく安定的にエネルギーを供給できる。 ベースロード電源(季節や天候、時間を問わず、電力を安定的に供給できる電源)の確保は重要だ。リスクはあるが、原発は(エネルギー転換において)現実的な選択肢だ。