COP29の焦点「気候変動対策資金」、金融システムにできることとは
トランプ勝利 世界は気候変動対策に向けて結束できるか
──10月に行われた米大統領選挙では、米国第一主義を掲げるドナルド・トランプ前大統領が勝利しました。トランプ氏は脱炭素に消極的な姿勢を見せています。世界は気候変動対策に向けて結束できるのでしょうか。 ブレイク:バイデン政権は22年8月に、気候変動対策を目的とした「インフレ抑制法」(IRA)を成立した。22年度から31年度にかけて財政赤字を約7370億ドル減らし、これを原資に3690億ドルもの資金をエネルギー安全保障と気候変動対策につながる産業に投入するというものだ。 IRAは、アメリカ経済の特定のセグメントにおける雇用の創出や産業の開発などを強力に後押しするものだ。しかし今、IRAは政治的な争点となっている。 トランプ政権の1期目、米国は地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定から離脱した。バイデン政権下で米国は再びパリ協定に復帰したが、トランプ氏は、大統領に就任したら再び離脱すると脅している。 トランプ氏は、エネルギー自給という強力な主張を掲げている。エネルギーの自給は、再生可能エネルギーやその他の手段を用いることでも実現可能だろう。だが、次期政権の基本的な考え方は、気候への影響を軽視し、エネルギーの自給により重点を置くものだ。 トランプ氏は、パリ協定や世界的な取り組みにおける米国の気候変動対策の立場を変更する可能性が高い。とはいえ一部の州では、経済成長や新規事業、新たな雇用をもたらしている国内の(気候変動対策関連の)プログラムを完全に解体することをためらうかもしれない。 米国をはじめとする一部の国は、他国より経済的にも技術的にも優位な立場にある。35年までにエネルギー需要が90%増加するとすれば、その90%は新興国によるものだ。世界のエネルギー需要に持続可能なやり方で応えるためには、国や地域を超えて、専門知識や資金を含む多くの支援を行うことが求められる。 私たちは今まさに、日々の暮らしのなかで気候変動の影響を実感している。米国では2つの巨大なハリケーンが襲来し、国内の一部地域が壊滅的な被害を受けた。東海岸では歴史的に見ても異常な気温の高さが続いている。気候変動の影響なしに、このようなことが起こるとは考えられない。 自然環境が変化していることを認識し行動に移さなくては、気づいたときには茹でガエルのように(手遅れに)なっているかもしれない。GHG排出量の削減やエネルギー転換は地球規模の課題であり、集団行動を必要とする。今一度、世界で一致団結することの重要性を認識するべきだ。
瀬戸久美子