神谷浩史、切実な願いごとは“健康第一”「声優殺すにゃ、刃物はいらぬ。風邪のひとつも引かせりゃいい」名フレーズを披露
映画「劇場版モノノ怪 唐傘」(7月26日[金]より全国公開)の完成披露試写会が7月7日に東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、声優を務めた神谷浩史、黒沢ともよ、小山茉美、監督の中村健治、プロデューサーの山本幸治が登壇した。 【写真】浴衣で完成披露試写会に登場した神谷浩史、小山茉美、黒沢ともよ ■17年の時を経て劇場版となった「モノノ怪」 本作は、高視聴率を記録した「怪~ayakashi~」(2006年、フジテレビ系)の一編「化猫」から派生し、2007年に放送されたテレビアニメシリーズ「モノノ怪」の劇場版。謎の男・薬売りが、人の情念や怨念が取り憑いたモノノ怪による怪異を鎮めるため、諸国を巡る物語。 CGと和紙テクスチャーを組み合わせた斬新な手法で生み出された絵巻物のような唯一無二の世界観と、薬売りのミステリアスな魅力は視聴者を惹きつけ、放送以来根強く愛されている。17年の時を経て劇場版となり、男子禁制・豪華絢爛(けんらん)な大奥を舞台にした新たな物語が展開される。 ■神谷浩史「まだまだ台本の読み込み方が甘かったと思い知りました」 この日は六本木の会場の他に、池袋、札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡の7か所でライブビューイングが行われた。神谷、黒沢、小山、中村監督、山本が涼やかな浴衣姿でステージに登場すると、会場から万雷の拍手が起こった。 山本は「1年の公開延期がありましたが、ようやく完成しました」と感無量の面持ちであった。シリーズの生みの親である中村監督は「支援の輪が広がったことによって、ビジネス、クリエイティブの面でもいろいろな方々が集まってくれた。作品が大きくなるきっかけをいただいた」とクラウドファンディング支援者に感謝を伝え、さらに「皆さんに観ていただけることが本当にうれしい」と喜びをかみ締めた。 主人公である謎の存在・薬売り役を演じた神谷は、「1カ月くらい前に、監督が『これからまだ1300カットくらい直します』とおっしゃっている段階のものを観た。本作は全部で、2600カットある。90分のアニメーションのカット数としては、ちょっとどうかしている」と舌を巻いた。 続けて神谷は「取り憑かれたように3回連続で観ました。1回目は映像に圧倒され、2回目は細かいところまで観ようと思ったのに、いつの間にか時間が過ぎていた。それくらい濃密」とこだわりの詰まった映像に惚れ惚れした様子を見せた。さらに「3回目は、台本を見返しながら鑑賞して。そこで、台本にありとあらゆる答えが詰まっていることに気づいた。本作に携わって、僕はまだまだ台本の読み込み方が甘かったと思い知りました」と台本の完成度に驚きつつ、声優としても刺激をもらったことを明かした。 中村監督は、神谷の薬売り役に「深く納得がいっています」と笑顔を見せた。薬売りは変身する前と後で違った表情を見せるが、中村監督は「変身した後の薬売りについて『特にイメージがないけれど、変えてほしい』とお願いをして(笑)」と具体的な指示をしなかったものの、「本番は一発OKだった」とその演技のすばらしさを称えた。 また中村監督は、薬売りというキャラクターの設定についても説明。テレビシリーズを始める際、「作中の退魔の剣は64本あり、薬売りもそれに合わせて同じ数だけ存在するという設定を作った」と裏話を口にしていた。 ■小山茉美、苦労を語る「アフレコはめちゃくちゃ大変でした!」 大奥でキャリアアップを図る新人・アサ役の黒沢は、元々シリーズの大ファンであるといい、本作においても好きなシーンがいっぱいあると明かした。特に、「今回は、薬売りさんのアクションシーンなど、カッコいいシーンがとても多くて。ビジュアル面での表現や、音楽とのハマり方もたまらない。この環境でご覧になるのがうらやましい」と観客に向けてコメント。 さらに黒沢は「後半のシーンは、すべての五感を溶けさせながら物語の中に入ってほしい。上も下も、わからなくなるような感覚もある」と、熱っぽく語った。 また大奥の最高職位「御年寄」を務める歌山役の小山は、「アフレコはめちゃくちゃ大変でした!」と告白して、周囲も大笑い。「台本では、セリフが横書きされていた」と秘話を打ち明けた小山は、セリフやカット割りのスピードにも驚愕したという。「あまりにも速いので、台本のページをめくるのが忙しくて。(ページをめくる)ノイズが入ってしまうといけないので、全部セリフを書き出して。それをもとに挑戦しました。こんなことは初めてですが、頑張りました」と苦労を吐露。中村監督は「小山さんに歌山役を受けていただけて、勝ったな!と思いました」と絶大なる信頼を明かした。 さらにこの日は、主題歌「Love Sick」を担当したアイナ・ジ・エンドからビデオメッセージが到着した。完成作を観た感想として「色彩の展開の数の多さにびっくりしました。そしてなんと言っても、声優さんたちの命の声の吹き替えというのが、ものすごいなと思いました。画面で起こっていることなのに、目の前でささやかれているようなくらい、生々しい瞬間が多々あり、声優の方々のパワーを感じた」とコメント。 続いてアイナ・ジ・エンドは「『凛として時雨』のTKさんが楽曲を作ってくださいました。とてもキーが高くて大変なんですが、もしよかったら一緒に歌ってもらえたらうれしいなと思います」とメッセージを送った。 中村監督は「和風の作品なので、そういった音を意識していただいた。TKさんもたくさん質問をしてくれて、いろいろなやり取りをして。すごくいい曲が仕上がりました」と大満足の表情を浮かべていた。 ■黒沢ともよ、切望する願いごとは「モノノ怪Tシャツがほしい」 また、情念や怨念が取り憑いたモノノ怪が登場する作品の内容にちなんで、「情念を抱くほど切望する願いごと」をそれぞれが短冊に書いて発表する一幕も。神谷は「健康第一」とつづった短冊を披露し、「切実です。若干いま、鼻声です。お聞き苦しい鼻声(びせい)を響かせています。“声優殺すにゃ、刃物はいらぬ。風邪のひとつも引かせりゃいい”という感じ」と名フレーズを作り出して会場の笑いを誘った。 黒沢は「モノノ怪Tシャツがほしい」、小山は「すべての邪気を祓い、この星を平和な星に」と願った。中村監督は「薬売りさんにたくさん会いたい!」とお願い。“実は薬売りはたくさんいる”という設定がありながらも、「まだ全然、会えていない。残りの人生をかけてなんとか…」とさらなる続編への意欲を見せていた。 七夕の日らしいイベントの最後に、神谷は「劇場で観るにふさわしい映像に仕上がっています。まず1回目は圧倒的な映像に身を委ねて、時間を過ごしてください」と改めて完成作に胸を張った。小山も「アニメーションというよりも、アート」だと映像美をアピール。黒沢は「アサの人生にいろいろなものを託して演じました。受け取っていただきつつ、圧倒的な世界観を楽しんでください」と演じた役柄に愛情を傾けた。劇中のモブ女中のお面を持った観客と一緒にフォトセッションを行い、大盛況のイベントは幕を閉じた。