史上最も呪われた海外映画は? 撮影現場の悲惨な死亡事故(1)未来のスターがまさかの銃殺…ハリウッドの黒歴史
映画の現場では、多くのドラマが生まれる。私たちの知り得ない影の努力が身を結び、奇跡の連鎖で作品が作り出されている。一方で、撮影現場は危険がいっぱいだ。出演者だけでなく、スタッフにも思いがけない危険が襲い、死亡事故も後を絶たない。今回は、撮影時に不幸に見舞われた呪われた洋画を5本セレクトして紹介する。第1回。(文・阿部早苗)
『クロウ/飛翔伝説』(1994)
監督:アレックス・プロヤス 脚本:デヴィッド・J・スコウ、ジョン・シャーリー 出演:ブランドン・リー、マイケル・マッシー 【作品内容】 ロックミュージシャンのエリック・ドレンバン(ブランドン・リー)は、恋人シェリーとともに悪の帝王トップ・ダラーの仲間によって惨殺される。一年後、エリックは神秘的なパワーによって蘇り、復讐をはじめる。 【注目ポイント】 コミックアーティスト、ジェームズ・オバーの人気コミック「ザ・クロウ」シリーズを原作に、復讐のために死後の世界から蘇った不死身のダークヒーローの姿を描く。ブルース・リーの実の息子ブランドン・リーが主人公エリックを演じ、遺作となったことで知られる作品だ。 監督は、のちに『アイ,ロボット』(2004)『キング・オブ・エジプト』(2016)を発表したアレックス・プロヤス。脚本は『悪魔のいけにえ3』(1991)などを手がけ、ホラー映画を中心に活躍する脚本家デイヴィッド・J・スコウと作家のジョン・シャーリーが担当した。 事件が発生したのは、1993年3月31日の深夜。主演のブランドン・リーは、ギャング役のマイケル・マッシーに銃殺されるシーンを撮影していた。マッシーは、4発の空砲をリーに撃った。しかし、カメラが止まってもリーは動かず、仕込んでいた血のりよりも遥かに多い血液が吹き出したため、病院に緊急搬送されることに。 検査の結果、腹部から脊髄にかけて弾丸が貫通していた。他にも、体内の損傷が激しく、手術は5時間にも及んだが、その後リーはあえなく死亡した。 原因は、リボルバーの不備による誤射で、銃身チェックの怠りもあったという。意図せずにリーを撃ち殺してしまったマッシーは、罪に問われることこそなかったが、誤射によるトラウマに苦しみ、暫く映画界から遠ざかることになる。 主演俳優の死亡という前代未聞の悲劇に見舞われた本作。お蔵入りかと思われたが、転んでもただでは起きないのがハリウッドの凄いところ。デジタル合成を駆使してリーの不在をカバーし、完成へと漕ぎつけた本作は、公開するとたちまち話題が広がり、スマッシュヒットを記録した。 伝説のアクションスター、ブルース・リーの遺伝子を継ぐブランドン・リー。悲惨な事故がなければ、今ではハリウッドのトップスターに君臨していたかもしれないと思うと、悔やんでも悔やみきれない。 (文・阿部早苗)
阿部早苗