復活する多摩川のアユ(2)川を大切にする心、アユを食べて川と親しむ
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復活しつつある多摩川のアユ。2016年の推定遡上数は463万尾だという。ここまで増えたのなら、少しくらい食べても良いのではないだろうか。多摩川でアユ漁を行い、料理店に卸しているという川崎河川漁業協同組合総代の山崎充哲さん(57)の漁に同行させてもらうとともに、「多摩川産天然アユ」の今後について考えてみた。
「足元を流れる川のおいしい魚として食べてほしい」
「ずいぶんアユが入ってるなあ」 ── 。夕方、神奈川県川崎市の多摩川堤防。軽自動車から川面を眺める山崎さんの言葉につられ、川に目を向けたがアユは見えない、わからない。 山崎さんは、環境コンサルティング会社の建設技術研究社を含む複数の事業を営む一方、飼いきれなくなった観賞魚を引き取る「おさかなポスト」をはじめ、多摩川の自然回復に向けてさまざまな取り組みに力を入れる。アユ漁もその一環。山崎さんは「今までアユは多摩川復活のシンボルだったが、これからは皆さんの足元を流れる川のおいしい魚として食べて欲しい」と語る。多摩川のアユを食べることで川と親しみ、川を大切にする心を生むと期待できるからだ。 夕日が赤く周囲を染める中、投網を抱えて川に入っていく山崎さん。アユ漁は、小学校時代からのキャリアがある。アユの泳いでいる場所は、ハネという水面にできるアユの泳ぐ跡をみればわかるというが、素人目ではオイカワなど他の魚と見分けがつかない。
アユのいそうなところを見定めたのか、山崎さんが網を投げた。 網を引き上げはじめると、長女の愛柚香(あゆか)さんがタモ網を持って近づく。網の下部をタモ網に入れた山崎さんは、網を振るいながら魚をタモ網の中に落としていく。 すべての網を振るい終わってからタモを覗かせてもらうと、10~15cmくらいと見られるアユたちがピチピチと跳ねていた。そんなアユを愛柚香さんが氷詰のクーラーボックスに入れていく。漁は最低2人で行うが、クーラーボックス係を含む3人で行う時もあるという。 アユ漁は、6月の解禁日から10月の禁漁日まで行えるが、山崎さんは8月のお盆まで、注文が入った時を除いてあまり漁に出ない。まだ大きさが小さいからだ。大きく育ったアユが獲れ出す盆過ぎ以降は、漁の回数も増える。漁をする時間は、夕方から暗くなるまで。