「圧勝」トランプの「経済政策」で日本の自動車メーカーは大打撃…!そしてアメリカ国民を待ち受ける、まさかの「悲惨な末路」
減税は短期的には恩恵だが、財政赤字を拡大
国内の税政策はどうか?トランプ氏は、前政権時代の2017年に、経済政策の柱として、10年間で総額1.5兆ドル規模の大型減税を実施した。これによって、法人税率を35%から21%に引き下げ、個人所得税の最高税率を39.6%から37%に引き下げた。 これは、富裕層優遇の減税策との批判があったのだが、トランプ氏は、今回の選挙戦で、減税策の期限を撤廃し、恒久的な制度にすると公約した。また、法人税率を、21%からさらに15%に引き下げるとした。 また、接客業に携わる人々が受け取っているチップや、社会保障の給付金への課税を廃止するとした。そして、住宅ローン金利を引き下げ、税制優遇措置などを通じて住宅の購入を支援するとした。一方、高齢者に対しては、公的医療保険や社会保障は、一切削減しないと明言した。 このような富裕層減税や法人税率の引き下げなどの政策は、短期的には、確かに企業に恩恵をもたらす。 ただし、それは、財政赤字の拡大を招く。そして、財政赤字の拡大はインフレ再燃をもたらす危険がある。 トランプ氏の支持基盤は、ラストベルト地帯などの貧しい白人が中心だと言われる。しかし、上記の減税政策を見る限り、こうした人たちが政策の対象として意識されているとは思えない。それにもかかわらず、貧しい白人がトランプ氏を支持するのはなぜなのであろうか? 私には、まったく不思議なことにしか思えない。
長期的な経済成長にはマイナス
アメリカでは、コロナから回復の初期において大量の早期退職が発生したため、顕著な労働力不足が生じた。それは賃金を上昇させ、インフレの原因となった。 こうした労働力不足を補ったのは、大量の不法移民であり、現在も安価な労働力としてインフレ沈静化と景気拡大に貢献している。不法移民を取り締まるのは当然だろうが、あまりに進めれば、アメリカの最大の長所である人種的寛容性を捨て去ることにもなる。 高関税による国内産業の保護は、長期的には、アメリカの経済発展の阻害要因になる。日本車への関税引き上げが実施されれば、日本の自動車業界にとっては大きな打撃となるが、それだけではない。アメリカに従来タイプの自動車産業が残ることが、アメリカの長期的な発展には阻害要因となるだろう。 トランプ氏の経済政策は、アメリカを強くするというのだが、長期的にはアメリカの発展にとってマイナスの効果をもたらすこととなる可能性が強い。
野口 悠紀雄(一橋大学名誉教授)