【伊達公子】世界と日本では目標設定が違う!世界のスピード感に付いて行こう<SMASH>
日本テニス界の課題として、ジュニア時代は世界と渡り合っていたのに、プロになってから思うように結果が出せなくなってしまう点が挙げられます。世界の流れと、日本では何が違うのか。私は前回紹介したテクニック面の問題の他に「目標設定のズレ」があると思います。 【画像】錦織、伊達も!日本人トッププロたちの“懐かしジュニア時代”の秘蔵写真をお届け! 日本のジュニアの場合は、12、13歳で全国大会を目指し、14~16歳で全国大会でトップレベルにいながらITFの国際大会にも目を向け、16、17歳までにグランドスラムジュニア出場を目指す傾向が少しずつですが見受けられます。それまでは18歳でプロ転向が大きな流れになっていました。 世界はもっと早く進んでいるのです。12、13歳までに自分のプレースタイルを確立し、13歳からITFジュニアの大会に出場。ジュニアのグランドスラムで勝ち始めるのと並行して15、16歳で一般のITF大会にも出場し始めます。一般の大会だけでは試合数をこなせないため、ジュニアの大会で試合数をキープしながらスキルアップをして、試合経験を積んでいきつつ、一般の大会にどんどんチャレンジしていくことになります。そこでもある程度結果が出せるようになったら、ジュニア大会を減らし、最終的に一般大会へ完全移行します。 15、16歳の一般大会への移行期には、グランドスラムジュニアに出場し、そこで戦えるレベルでなくてはいけません。18歳のジュニア最終年代では、もうグランドスラムジュニアに出場せず、一般大会に軸足を移している場合が多いです。スピード感の違いがこれでわかるでしょうか。 13歳までに将来的に勝てるテニスを確立しているからこそ、このペースでの成長が可能になります。その時、クオリティは低くなるのは仕方がないことです。身体が出来上がり、筋肉も付いてきて、勝負の経験も加わってくれば、一気にレベルアップできる時がやってきます。 良い例が、フランスのムラトグル・アカデミーで活動しているジュニアの、クセーニャ・エフレモワです。彼女が13か14歳の時にインスタグラムを見ました。細くて小さくてかわいい女の子でしたが、すでに大人のようなテニスをしていました。ネットにも出て、ドロップショットも使い、アタックするボールはしっかりと打ち切る力があり、守るところは守る。コース取りもちゃんとできていました。 今年、彼女は15歳で全豪オープンジュニアでベスト8入りしています。身体も大きくなり、昨年末からITFの一般大会にも出場するようになり、一番下のカテゴリーではありますが、すでに優勝もしています。 今の時代、プロを目指す子どもたちはやることがたくさんあります。身体を鍛えることもその1つです。身体の成長は個人差がありますから、専門家にアドバイスをもらいながら行なってください。特に女の子の場合は、生理のタイミングの問題もあるので、どの年代で何をするべきかは、専門家と相談しましょう。 個人差を考慮しない場合ですが、大まかな目安として、12、13歳でも体幹トレーニングは行なえます。15、16歳になったら、プロとしてツアーの中で戦っていけるだけの身体作りが必要になります。例えば、練習の前にはジムで身体を温めて、コートでアップをして動ける状態にします。短い人で20~30分、時間をかける人であれば40~50分行ない、練習に入ります。トレーニングも、年齢に合わせて重さを変えることで取り入れられます。 これらは日々の努力で、1回行なったからといって、急激に何かが変化することはありません。だからジュニアたちは重要性を感じず、ルーティン化がなかなかできません。しかし、当たり前のことを当たり前のようにコツコツ継続していくことでケガをしない身体をキープできるのです。 継続してやっている時には見えづらい進化も、やらなくなると変化に気づくものです。ジュニア期から必要なことに取り組んでいる選手は、プロになる頃には戦える身体がある程度できているのです。 文●伊達公子 撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン