伊東純也が「いやあ恥ずかしいですね…」と語った理由。日本凱旋で抱いた危機感、実は怒られていた?「キレてました」【コラム】
⚫︎「本当にいろんな言い訳なしに…」
「プレシーズンだとしても、監督は今日、キレてましたね。本当は45分だったんすけど、『さすがにこのまま下げられない』って言われたから」と伊東自身も苦笑する。 20歳前後の若手が数多くいる集団だけに、30代の彼とテディ・テウマ(10番)はチームをけん引しなければいけない。その責任感を彼は改めて痛感した様子だった。 指揮官のカツとセカンドアタッカーのレダ・カドラ(14番)の投入によって、後半のスタッド・ランスはやや内容が改善。伊東も繰り返しチャンスを演出し、後半18分にベンチに下がった。そこからは若いメンバー主体の編成になり、躍動感は見せていたが、最終的に清水の成岡輝瑠に3点目を奪われ、0-3で終了。まさかの2試合勝ちなしという形を余儀なくされてしまったのだ。 「いやあ、恥ずかしいですね…。負けちゃったし。不甲斐ない試合をしたなと思っています。さすがに1勝もしないで帰るっていうのはちょっと問題なんで、本当にいろんな言い訳なしに勝たなきゃいけない。勝ちにもこだわらなきゃいけないと思います」と伊東は大いに反省。危機感を募らせた。 目下、気になるのは得点力不足だ。そもそもスタッド・ランスはウィリアム・スティル監督が率いていた昨季も得点数が低かった。主要な得点源はテウマ、ディアキテ、中村、伊東あたりだが、2ケタに乗せるようなスーパーな存在は皆無。今季も戦力的には昨季とほとんど変わっていないだけに、底上げを図らない限り、上位躍進はあり得ないのだ。
⚫︎新シーズンの活躍が日本代表復帰のカギに?
「今の監督は守備の方が細かいので、『中絞れ』とか守備の部分はよく言われます。攻撃面の方は、左の敬斗はなるべく中に入ってサイドバックを上がらせるという意図が監督にあるみたいだけど、俺は開いてもいいし、中に行ってもいい。自由にやっていい感じです。 俺自身、去年は3点しか取れなかったし、もっと点を取るところはやらないと。チャンスメークの部分も引き続きやっていかないといけないですね」と伊東はやるべきことを明確にしていた。 猛暑の日本でのプレシーズンということで、過酷な環境に不慣れな選手たちは相当に苦しんでいる様子。「チームは20~30パー、俺はジュビロ戦よりは動いたかなという感覚はあるんで、まあ50パーくらいまで来てるかなと思います」と彼は言う。 開幕まで3週間ということで、このまま足踏み状態を続けるわけにはいかない。31日の町田戦(町田GIONスタジアム)、8月3日の神戸戦(ノエビアスタジアム神戸)では確実に結果が求められてくる。伊東本人が語気を強めるように、本当にこのままフランスに戻るわけにはいかないのだ。 開幕直後のパフォーマンスが、9月からスタートする2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選での日本代表復帰にも大きく関わってくるのは間違いない。週刊誌報道以来、森保一監督は「純也を守るため」という理由で招集見送りを続けているが、事件の方は収束に向かいつつある模様。それが今は一番重要ではあるが、肝心の伊東が頭抜けた存在感とインパクトを残し続けない限り、代表復帰はあり得ない。 31歳という年齢を考えると、ハードルはより一層、上がっていく。この日の一挙手一投足を見る限りだと、エース級の働きを見せていた2023年とそん色ないプレーだったが、得点やアシストという目に見える結果があるかないかは全然違う。伊東には日本人トップ選手の意地とプライドを賭けて、新シーズンは頭から一気に爆発してほしい。 そのためにも、まずは町田との日本ツアー3戦目だ。目下、J1首位を走る相手は老獪な守備、切り替えの早さ、一刺しの鋭さを前面に押し出してくるチーム。清水戦のようなスキを見せていたら、1勝もせずに日本ツアーを終えることもあり得る。それだけは何としても回避しなければいけない。 生まれ故郷・神奈川県に近い首都圏凱旋で伊東がどういう違いを見せてくれるのか…。期待を込めて見守りたいものである。 (取材・文・元川悦子)
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