地方では「老老介護」状態のライドシェア、拙速な「解禁」への拭えぬ違和感 「導入ありき」の議論は「順序が逆」
■ 「ライドシェア導入ありき」で進める理由の説明を 「議論の順序が逆」と感じる根拠は、国がこれまで進めてきた地域交通を再構築する「リ・デザイン」という大枠におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のあり方にある。 2023年10月1日、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律」が施行された。これにより「あらゆる政策ツールを最大限活用し、利便性・生産性・持続可能性の高い地域公共交通へのリ・デザイン(再構築)を加速化する」と、国土交通省は説明している。 本来、ライドシェアは公共交通のリ・デザインにおける「政策ツールのひとつ」であるはずだ。ところが規制改革推進会議での議論では、「ライドシェア導入ありき」という印象が強い。 そうした中、河野大臣は4月24日の第12回 規制改革推進会議・地域産業活性化ワーキング・グループのオンライン会議の冒頭、岸田首相からの指示を受けて、敏速に制度改善を行い、5月末の取りまとめに向けて論点を整理するという国の方針を会議参加者と改めて共有した。 あわせて、次のような発言があった。 「既存の公共交通、タクシーだけではなく、鉄道、バス、いろいろな問題に直面している中で、ライドシェアをどのように位置付けるのか地域交通全体の議論もそろそろしっかり進めないといけないと思っている」 まさに、地域公共交通における議論の順序が逆である。 河野大臣もこうした「順序が逆の議論」という状況にあることを、十分認識しているはずだ。それでもなお、これまで「ライドシェア導入ありき」の議論を優先せざるを得なかった理由について、今後何らかの形で説明するべきだと思う。
■ 事業性と公共性のバランスは? 今後、「ライドシェア全面解禁」を、地域公共交通のリ・デザインとどのように「すり合わせる」のかという点が大きなハードルになると思われる。つまり、「事業性」と「公共性」のバランスをどう取るかだ。 例えば、鉄道の再編については、JR各社から不採算事業である路線事業を地域自治体の連合体へ継承する動きが全国各地で広がろうとしており、すでに複数の事業が立ち上がっている。 また、路線バス、コミュニティバス、そしてタクシー事業の再編においても、公共性を重視した人工知能(AI)を活用したオンデマンドバスや自動運転バスが全国各所で社会実装のステージに入っている。 そうした中、「ライドシェア全面解禁」においては、公的資金の投入と事業性とのバランスについて、市町村は地域住民にしっかりと説明する必要がある。 確認のために説明すると、新設された「自家用車活用事業」は、道路運送法第78条第3号における「公共の福祉を確保するためのやむを得ない場合において」自家用車を有償で利活用することを認めるという定めを、事実上、拡大解釈することで成り立っている。 あわせて、同2号での交通空白地域や福祉のために地域住民の共助・互助活動としての「自家用有償旅客運送」の枠組みでも対応可能になっている。例えば、交通空白地域の解釈や、場合によっては市町村を越えた運用などにおける規制緩和が進んでいるところだ。