やりがち?むせた人の「背中を叩く」行為、実は危険!「水を飲む」もNG 専門家に正しい対応を聞いた
食事中にむせた時、私は背中を叩かれることが多い。妻が「むせが早く治まるように、むせた人の背中を叩いてあげる」タイプの人のため、食事中にむせるとほぼ例外なく背中を叩かれる。それも、けっこう強めに…。むせの苦しみと同時に背中にバンバンバンと痛みを感じ、むせが治まると妻のどや顔を拝見することになる。しかし、いつも思っていた。「背中を叩く必要って本当にある?むしろ、背中の痛みの方が強いのだが」と。長年のこの疑問を解決するため、日本歯科衛生士会の篠原弓月さん(在宅・施設口腔健康管理推進委員会副委員長)に、むせた時の正しい対応を聞いた。 【まとめ】むせた時の正しい対処法とNG行為
むせは体の防御反応
まず、むせる原因を聞いた。「食道から胃に入る飲食物や唾液が、誤って空気の道筋である気道に入りかけた時に、強い咳の勢いで出そうとしている状態がむせ」と篠原さん。むせは、気管から肺に飲食物が入り込む「誤嚥(ごえん)」を防ぐ生体の防御反応という。
背中を叩く行為が危険な理由
むせた時の対応として「背中を叩く」「水を飲む」といった行為が知られているが、篠原さんは「これらは誤った対応」と指摘する。どちらの行為も「気道に入りかけた物を押し出そうとする咳による空気の流れの妨げになる」と話す。水を飲む行為は「さらに激しくむせ、呼吸が乱れて誤嚥する危険がある」。また、背中を叩く行為は、「誤嚥しかけた物を咳の力で上に出そうとしているのに、重力でさらに下にある深い気管に落とし込むことになり危険」という。
“背中を叩く”は窒息の対応
むせた人の背中を叩く行為が、むせた時の対応として広く知られている理由は「不明」と篠原さん。ただ、気管の入り口を物が塞いでしまう窒息の対応としては、背中を強く叩いて物を吐き出させる行為が有効なため、こうした対応とむせた時の対応が混同されている可能性はあるという。専門家のセミナーでは15年ほど前から「むせた時は背中を叩かない」と指摘されているが、この知識は「まだ一般には広まっていない」と篠原さん。
むせた時の正しい対応
それでは、誰かがむせた時に周囲の人はどうすればいいのだろうか?篠原さんは「しっかり咳をしてください」と声をかけ、「背中は叩かずに軽く下から上にさする」ように勧める。むせた人は、口の中の食べ物が咳で飛び散ることを気にして口を閉じてしまうことがあるので、ティッシュやタオルを口に軽くあてがって、しっかりと咳をしてもらう。「会食などで周囲に人がいると、マナー違反として咳を我慢してしまうことがあるが、しっかり咳で出し切ることが重要」