雪の札幌で開催中の国際芸術祭へ|〈モエレ沼公園〉〈北海道立近代美術館〉〈札幌市資料館〉〈SCARTS〉【後編】
3回目を迎えた「札幌国際芸術祭」は初めての冬の開催。輝く雪とアートが並ぶ、見どころ満載の芸術祭です。 【フォトギャラリーを見る】 雪の札幌で開催中の国際芸術祭へ|〈未来劇場〉【前編】から続く 〈北海道立近代美術館〉では1924年から2024年の現在までの100年を再読する『1924-2024 FRAGILE[こわれもの注意]』展を行っている。2つの大戦にはさまれた1920年代はシュルレアリスムの勃興やテレビ・ラジオの定期放送が始まるなど、芸術やテクノロジーの分野でも分岐点となった時代だ。それから100年、私たちは何を見てきたのかをたどる。 この展示では北海道独自の歴史にも触れる。栗谷川健一《北洋博》は太平洋戦争で中断された北洋漁業が1952年に再開されたことを記念して開かれた博覧会のポスター。「北洋漁業」は北海道など、日本の北方で国際的に行われる漁業。展示にはこのほかにも漁夫をモチーフにした絵画や彫刻、北洋漁船で働きながら漁の様子を撮り続けた平野禎邦の写真などが並ぶ。
壁一面にかけられた愛らしい刺繍やアップリケの壁掛けはH. マノンクらカナダ極北地方の先住民族イヌイットの女性達の手によるもの。70年代ごろ、当時すでに失われつつあった民族の伝統的な暮らしの様子や動物との関わりを表現している。素材は防寒着に使った布地の端切れだ。厳しい気候で生きる人々の知恵が詰まっている。
行武治美の《凍景》はこの展示空間にあわせて制作されたインスタレーション。鑑賞者はワイヤーで吊された無数のガラスによる“回廊”を通り抜けることができる。ガラスに反射、透過する光と、ガラスどうしが接触して生じる音とが、北海道の冬の森を思わせる。
色鮮やかな宮田彩加の作品はコンピューターが内蔵された家庭用ミシンの刺繍データに意図的なバグを加えることで、何かがズレたイメージを作り出す。実験室で、ある生物と別の生物をかけあわせたときに予想と違う結果が生じた、そんな状況も思わせる。