日本開催PGAツアーがもたらすもの 松山英樹が思う“ZOZO”の意義
ZOZOでは日本の伝統的なコースがツアーの基準にのっとって仕上げられている。ラフは長く、グリーンは硬く、速く。ピンポジションは戦略的に。視覚的なギャップをいくつもつくる。それでいて選手にとってフェアで、実力差が表現されやすいセッティングを目指す。 一方では「プロゴルフはエンターテインメントだ」という理念を崩さない。会場のアコーディア・ゴルフ習志野CCでは例年、左ドッグレッグの10番ホールのティを本来のティイングエリアではなく、後方のパッティンググリーンの上(一般営業時)に設定する。距離を長くとることで、選手は左サイドの林の向こうを狙えなくなる。多くの来場者に、ボールが地面に落下するシーンを観てほしいという配慮からだ。 ハーディ氏は日本人選手の世界進出の鍵について、「ひとつはこの大会でプレーすることだろう。世界最高峰のコンディションで、世界最高峰の選手とプレーすることが一番の経験になる」と自信を持って言った。
今季、ルーキーイヤーでシードをほぼ手中に収めている久常涼は2022年大会で、次週の出場権獲得となるトップ10入りを逃して(12位)涙した。そして昨年、4位で終えた石川遼と6位に入った平田憲聖は見事、次戦のメキシコでの「ワールドワイドテクノロジー選手権」に参戦。まさにZOZOが世界への扉になった。 PGAツアーのアジア太平洋地域のトップであるクリス・リー氏は「ZOZOチャンピオンシップは若いスターたちに夢の実現のために必要な思考と経験を与える、重要な役割を果たしてきた」と話す。最高峰のツアーだからこそ提供できた価値がある。「今後さらに多くの日本人選手がツアーに参戦する可能性があり、目に見えた成果が出始めている。次世代ゴルファーに間違いなくインスピレーションを与え続けるでしょう。ツアーには長年、日本でトップレベルの競技を開催し、興奮を届ける責任があります」 3年ぶりの大会制覇を目指す松山は、「あのギャラリーの雰囲気を醸し出せるところって、アメリカでもメジャーを除けば、そうそうあるものではないんです。それに、観戦マナーの良さや、真剣にゴルフを観る応援の仕方なんかは日本ならではだと思う。だからこそ盛り上げたい気持ちが強い」と意気込む。アジアゴルフのハブ機能、国内のファンや選手にとってのゲートウェイとしての価値。日本でのツアー開催の意義は、“ただの1試合”にとどまらない。(編集部・桂川洋一)