日本開催PGAツアーがもたらすもの 松山英樹が思う“ZOZO”の意義
大団円に終わった2019年大会だが、振り返れば苦難の連続だった。記録的大雨の影響で2日目のプレーができず、来場者の安全を考慮して3日目を無観客で開催した。すべての選手が72ホールを終えたのが週明けの月曜日。国内ツアーでは日曜日に大会を終わらせるために競技を54ホール、36ホールと短縮させるようなケースだが、世界最高峰のツアーは違う。 「72ホールを完遂させるのがPGAツアー」と松山。大会スタッフによる徹夜覚悟のコースの復旧作業が行われた。「月曜日に自分がプレーしたのは(持ち越された)6ホールだけ(ウッズは7ホール)。そのためだけに、たくさん(2563人)のギャラリーが来てくれたことを覚えている。本当にすごいことだし、ゴルフのファンはやっぱり多いんだなと感じた」 来場者数は練習日を含めて5万4840人に上った。試合期間中は順延日、無観客日を挟んだにもかかわらず4万3777人を記録した。その年の国内男子ツアー単体で行われた試合の最多は「中日クラウンズ」2万8060人。直近の2023年もZOZOは3万2171人を集め、「三井住友VISA太平洋マスターズ」の2万3569人をしのいだ。
記念すべき第1回大会のタイトルを逃した松山は、2021年大会(第3回)に歓喜の瞬間を迎えた。終わってみれば2位には5打差をつける圧勝だったが、「(同年の)マスターズ勝った後、良い成績が出たり、出なかったりという一年。夏からは(東京)五輪でメダルを獲れず、調子は最悪と言える感じで試合に入っていた」 自らを奮い立たせてくれたのは、母国の大声援。22歳で海を渡り、コロナ禍もあって遠のいていた懐かしい声に背中を押された。「普段、米国では“ホーム”でプレーできることなんか、まず、ないから。やっぱり応援の力って本当に大きいんだなと感じました」。国内ツアーで2勝した2016年以来、実に5年ぶりに日本でトロフィーを掲げた。 ZOZOというゲームを日本で開催する意義について、松山は今も「PGAツアーを身近に感じられることは大きいこと」だと言う。賛同するスター選手は多い。アダム・スコット(オーストラリア)は「私はキャリアの多くの時間を日本で過ごしてきた。素晴らしい記憶と、素敵な人々の印象ばかりが残っている」と話す。