岐阜の絶景観光、飛騨小坂の滝と湿原を巡る…下島温泉の高濃度炭酸泉で体を癒やす
滝の轟音(ごうおん)が静謐(せいひつ)な森を貫く。滝壺(たきつぼ)から立ち上る霧は、風を呼び、渓谷の隅々にまで行き渡り、全身を包み込む。御嶽(おんたけ)山(標高3、067メートル)の西側一帯に広がる岐阜県の飛(ひ)騨(だ)小(お)坂(さか)エリアには、たくさんの滝があり、年間を通じて滝めぐりを楽しめる。そして、そこにある下島(したじま)温泉は、高濃度炭酸泉という全国的に珍しい泉質を誇り、滝めぐりで疲れた体を癒やす。この滝と小坂地域の温泉を「岐阜未来遺産」としてアピールする岐阜県に招待され、滝を愛するガイドとともに渓谷を歩いた。(編集委員 森太)
スタートは溶岩の絶壁を楽しむ「がんだて公園」
「ようこそ、いらっしゃいました」。東京から新幹線、特急ひだ、在来線を乗り継ぎ、JR高山線飛騨小坂駅の歴史ある木造駅舎に到着すると、滝めぐりガイドの熊崎(くまざき)潤(じゅん)さん(41)に迎えられた。岐阜県観光国際政策課の川瀬雄貴さんも同行し、ここから車で20分ほどのところにある「がんだて公園」からスタートした。
駐車場の眼前にそびえ立つ溶岩の絶壁「巌立(がんだて)」に圧倒された。「約5万4000年前の御嶽山の噴火によってできた溶岩流の断面です」と熊崎さん。地震や長年の風雨で崩落したり、剥がれ落ちたりしながら、垂直の岩肌をむき出しにしてたたずんでいる。2本の川に挟まれたこの巨大な溶岩台地は、高さ約72メートル、幅約120メートルあるそうだ。頂上部分は、森になっている。
ここから御嶽山頂まで2000メートル以上の標高差がある。その急峻(きゅうしゅん)な地形を豊富な水が勢いよく流れ落ちるから、滝が多い。あまりにも多いため、小さな滝はカウントされない。高さ5メートル以上の滝だけで200以上あり、地元は「日本一滝の多い町」を掲げる。それらの滝を安全に楽しめるように、地元住民らでつくるNPO法人「飛騨小坂200滝」がさまざまなガイド付きツアーを用意している。