「野球やるべ」津波に遭った岩手・大槌高校でただ1人の野球部員、同級生に支えられ最後の大会で全力プレー
野球部員ではない助っ人は夏の大会に出場するわけでないが、練習は田口さんとほぼ同じメニューをこなす。田口さんは「手伝ってもらうという形ではなく、みんなで楽しく野球をしたいから」と理由を教えてくれた。 ▽連合チームは全国で128 日本高野連によると、今夏の地方大会に参加したのは加盟校のうち3744校。史上最多の4163校が参加した2003年の大会以後、減り続けている。 部員不足の学校による連合チームは昨年より16多い128(385校)で、岩手県では大会に参加した64校中、13校が五つの連合チームを組んだ。大槌高は部員4人の県立山田高(山田町)、8人の県立岩泉高と一緒になり、ユニホームはばらばらだ。 大槌高からの距離は近い方の山田高で約10キロ、遠い岩泉高だと50キロ以上も離れており、平日は集まれない。それでも週末の合同練習や、LINE(ライン)のグループトークでやりとりをするなどして交流を重ねてきた。山田高3年の佐藤暖斗さん(18)も、今年の新入部員が入る前の1年間は1人だけだったという。
「仲間が手伝ってくれて、うれしかった。集大成の夏、仲間には楽しんでプレーする姿を見せて感謝を表したい」と田口さん。いったんは離れた野球部に戻り、仲間に支えられながら練習を続けて4カ月。最後の大会が始まった。 ▽1番・一塁、気持ちで打った適時打 7月8日、盛岡市の「きたぎんボールパーク」。グレーのユニホームを着た田口さんは「1番・一塁」で主将も務めた。対戦相手の盛岡中央高は昨年夏の県大会で決勝に進み、プロ野球・楽天の銀次選手らを輩出した強豪だ。 1回表の第1打席は三塁フライに倒れて、チームも得点できなかった。相手の攻撃は1回裏こそ1点に抑えたが、2回は一挙7点を取られて大きなリードを許す。第2打席は、仲間が安打や進塁打で二死三塁のチャンスを作った場面で回ってきた。絶対に打つと気持ちを込め4球目をしぶとく振り抜くと、ボールは快音を上げてセンター前へ。三塁走者が生還して1点をもぎ取った。一塁上では控えめなガッツポーズで声援に応えた。