『湯婆々は、鈴木敏夫なんだよ』夏木マリが明かす。宮崎駿の“演技指導”
ニッポン放送で毎週木曜日の夜8時からお送りしている『NEXT STAGEへの提言Ⅱ』。 この番組は、日本を代表する各界の著名人が毎週登場。今の日本の礎を築いた著名人たちは、何を考え、何を次世代に伝えるのか。芸能・文化・音楽・スポーツ・経済・政治など、日本を代表する各界の著名人が週替わりで登場し、自身の人生を振り返りながら、「次世代・NEXT STAGE」への提言を発信していく。10月31日(木)の放送では、俳優で歌手で演出家の、夏木マリが登場。なお、この日の放送はプロ野球中継のためニッポン放送ではオンエアされず、ネット局のみでの放送となった。
夏木は、1973年に「絹の靴下」で歌手デビュー。80年代から演劇にも活動の場を広げ、93年に企画、構成、演出、出演を自身が手がける舞台シリーズ「印象派」を立ち上げた。また映画「男はつらいよ」シリーズや、NHKの連続ドラマ小説「カーネーション」や、「おかえりモネ」また2001年にはアニメ映画「千と千尋の神隠し」で湯婆々、そして銭婆の声優を務め、話題を呼んだ。 「千と千尋の神隠し」でのレコーディングの最中、原作・脚本・監督の宮崎駿氏と、こんなやりとりがあったという。 夏木:最初、台本を読んだ時に、(湯婆々は)悪役だと思ったものですから。割と俳優って悪役やる時に張り切っちゃうんですよね。私、特にそういうタイプなので。レコーディング当日、Aコース、Bコース、Cコース……いろんな悪役を用意してスタジオに入りました。そしたらきっと宮崎監督がお好みじゃなかったと思うんですね。さーっと後ろからいらしてね、「このジブリには、一番上の階に鈴木敏夫っていうプロデューサーがいるんだよ。この湯婆々は、鈴木敏夫なんだよ。一生懸命仕事して、金勘定してるだけなんだよ。だからね、この湯婆々も、金勘定している一生懸命働いているおばさん。それでお願いします」と。別に(湯婆々は)悪役っていうことじゃないっていうことを教えていただいて。すごいエモーショナルなアドバイスをいただいて。 2022年に舞台「千と千尋の神隠し」として公演。ロンドンでも公演された。 夏木:ロンドンの方に観て頂くのは、どういう風になるのかなと。海外の人は、字幕を見るという文化がないので、海外では受け付けられなかったらしいんですけど。この頃、YouTubeとかで字幕付きをよく見てるから慣れてらっしゃるみたいで。あと、ジブリのファンが相当いらしたので、みなさん吉本新喜劇みたいに笑うんですよ! あの経験をしたら、日本のお客様ってお行儀いいじゃないですか。日本は飲食禁止。だけどロンドンのお客様は、ビール飲むし、おにぎり、サンドウィッチ、ワイン飲みながら食べながら見てくださるので。こういうのいいなと思いました。 俳優、歌手、演出家……さまざまな顔を持つ夏木マリが、次世代の若者に向けて、想いを語った。 夏木:たくさん失敗をすることね。行動しないと夢に近づけないので、行動しますよね。でも必ずしもそれが成功だとは限らないじゃないですか。でも大きい失敗の方がウェルカムで、学ぶことがあると思う。失敗してから、自分で整理整頓して、もしそれが自分に合わなければ、次の行動を起こして、成功を掴むかもしれない。とにかくたくさん動いてたくさん失敗することだと思う。 夏木は1993年から自らによる演出作品、『印象派』シリーズの制作を手掛けている。演出家としての活動を振り返った。 夏木:「印象派」も、成功と言えるか失敗と言えるか、ちょっと微妙なところなんですけども。ビジネスとしては、全然成功してないんですね。だけど、私自身が得るものは、この30年間、印象派やって、すごく大きかった。今私がここにいるっていうことは、印象派のおかげだと思っています。