240万円で手にいれた夢のカーライフ エンジン編集部アライのオープンカー、5.3リッターV12エンジンのジャガーXJSコンバーチブルは普段使いできたのか?
この贅沢さを味わえるのは幸せなことだ!
2020年11月、1992年型ジャガーXJSコンバーチブルを購入、初めてオープンカー持ちとなったエンジン編集部アライ。オープンカーとの4年の日々はどうだったのか? 【写真13枚】俳優の仲村トオルさんのXJ-Sコンバーチブルと記念撮影! 内外装色も同じだった!! ◆12気筒なんて買って大丈夫なのか? 2020年11月、インターネットで見つけたガンメタの1992年型ジャガーXJSコンバーチブルは、あまりにも美しかった。とりあえず、見学だけでもさせてもらおうとオープンカーの専門店「バランス」に電話した。アポイントを取り付けたあとから考えたのは、ジャガーの12気筒なんて買って大丈夫なのか? ということだった。ジャガーの2座オープンはきっと、イギリス趣味の病膏肓に入った人たちが、天気のいい週末に乗るもので、心にも財布にも余裕がないと楽しめないのではないか? 店を訪問する日が近づくにつれ、期待とともに不安も広がったのである。 店で見たジャガーXJSコンバーチブルは新車のように輝いていて、独特のオーラを放っていた。なんて綺麗なクルマなんだろう! 訪問前に感じた不安はどこへやら、心の中で「いますぐ捺印!」と叫んだ。購入価格240万円である。 2019年11月に1987年型ジャガーXJ6を購入していたので、ジャガー2台持ちとなった。さらに当時は本誌長期リポート車として1992年型メルセデス・ベンツ300TEを担当していたので、自宅マンションの駐車場にはちょっと古いクルマ3台が収まることになった。 このなかで最も信頼性の高いのはメルセデス・ベンツ300TEだろう。5.3リッター12気筒エンジンのXJSコンバーチブルは、きっとセンシティブなクルマに違いない。真夏は乗れないだろうし、遠出もできないかもしれない。テレビで新型コロナ・ウイルスのニュースを見ながら、XJSコンバーチブルはハレの日専用と決めた。 しかし、XJSコンバーチブルは乗るたびに私が感じていた不安を小さくしていった。12気筒エンジンはぐずることなく一発でかかり、アイドリングは安定している。これが完全バランスというものかと感心するほどだ。5.3リッターV12は最高出力280ps/5500rpm、最大トルク415Nm/2800rpmを発生する。ATは3段で、どこまでもシューッと引っ張っていく感じがいい。車重は1840kg。ゆったりとしたクルージングが気持ちいい。エアコンの効きも抜群で助手席の妻が「寒いから止めて」と言うほどだ。 12気筒エンジンの英国製2座オープンをしれっと普段使いするってカッコイイかもしれない。XJSコンバーチブルとの日々を重ねるにつれ、自分のなかでハレ専用のクルマではなくなっていった。 ◆目立つクルマ 変化は自分自身にも起きた。屋根を開けたXJSコンバーチブルを路上で見かけることが滅多にないこともあって、いつだって誰かの視線を感じるようになった。XJSコンバーチブルは目立つクルマなのだ。東京タワー近くの交差点で停まったりすると、外国人観光客がスマホを私に向けたりする。こうしたとき、どんな表情を浮かべ、どんな姿勢でいるべきか、どんな走り方がXJSコンバーチブルにふさわしいのか、というようなことを意識するようになった。いい歳をした男が乗るのだから、単に目立つだけではすまないと思うのである。 XJSコンバーチブルへの信頼感が高まるにつれ、長距離ドライブもするようになった。なかでも2021年夏に北海道を走ったことはとてもいい思い出になっている。 5.3リッターV12の豊かなトルクに任せて、北海道の丘陵地帯を低い回転域でゆったりと進んだ。走っているのは自分たちだけで、大地を独り占めしているような気分になる。緩やかな坂を上ったり、下ったりして早朝の風を頬に感じた。XJSコンバーチブルのトロけるような柔らかな乗り心地も気分の良さに貢献していた。このクルマで来て本当に良かったと思ったものだ。帰路はフェリーが欠航して青森から東京まで自走することになったが、それがグランドツアラーとしての魅力をさらに増すことになった。購入したときは、全行程2630kmの自動車旅行ができるなんて想像しなかった。 2022年の正月休みには九州の阿蘇を走った。当初、長期リポート車のメルセデス・ベンツ300TEで行くはずだったが、バッテリー不調で動かずXJSコンバーチブルで出掛けることになったのである。 メルセデス・ベンツ300TE、ジャガーXJ6、XJSコンバーチブルという3台のなかで、最も信頼性の高いのは、いつしかXJSコンバーチブルになっていた。 これまでに大きなトラブルはない。2021年と2023年に車検を受けている。費用は35万3600円と42万4450円だった。 XJSコンバーチブルとの4年間を通じて、クルマの楽しさっていろいろだなとつくづく思うようになった。めくるめく速度と戯れる喜びばかりではないし、キレ味するどい爽快なハンドリングだけでもない。XJSコンバーチブルでゆったりと走ると遅いという感覚ではなく、優雅さを感じることができる。 長いノーズに収まるのは5.3リッターV12という大排気量エンジンで、全長は4820mmもあるのに2人しか乗れない。この贅沢さを味わえるのは幸せなことだ。 そしてオープンのときにどんどん入ってくる風の匂いとか強さとか、街のサウンドとか、太陽の光とか、そういうものを感じるのも嬉しい。 冬は空気が凛としてハッキリとそれらを感じることができる。冬こそオープンだ。 文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦 (ENGINE2025年1月号)
ENGINE編集部
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