『マウンテンドクター』が極限状況で示した帰るべき場所 岡崎紗絵が見出した医師のあり方
大過なく下山できたのは多分に運の要素も
救助される側は、山の上でいっきに現実に引き戻される。長田のように肢を切断するかどうか決断し、手術後の人生を思い描く必要がある。そこには教訓と呼ぶには苦すぎる現実を受け入れることも含まれる。劇中で長田の妻と娘は長田の考えを理解して支えると伝えたが、誰もが理解者にめぐまれるわけではない。 長田への手術で典子が患者に語りかけることで不安や恐怖を軽減し、スムースな施術に結びつけたことは、アイデンティティに揺さぶりをかけられていた典子にとって、自身の原点を再確認する意味があり、自らの選択が間違っていなかったことの証明になっただろう。そのことは聖子と対峙する上で力になるに違いない。 第7話を観て、自分がこれまで山に登って、大きな事故なく、命の危険に直面せずに五体満足で下山できたのは、ただ単に運が良かっただけと痛感した。同時に理解ある家族や支えてくれる友人たちを持てたことの幸運を再確認した。遭難や事故が起きれば、多くの人がそのために尽力する。その事実を忘れず、現実にしっかり足をつけながら、まだ見ぬ景色を楽しんでいきたい。
石河コウヘイ