森を育て未来に水を引き継ぐために何ができるか? 小学生向けの出張授業を受けてみた!
今回は、メディア向けということなので、実際に答えなくてよかった(セーフ!)が、実際の授業では「木を切ればいい!」、「生き物をもってくる!」など、子どもたちからさまざまな意見が飛び交い、ディスカッションが行われる。「ミミズや昆虫だけじゃなくて、モグラが耕してくれている」など、クラスによってユニークな意見も飛び出すそうだ。田中さんによると、「子どもたちがみんな積極的に考えて発言するのがとてもうれしい」という。 そんな水を育むには日本国内の場合、約20年の歳月が必要だという。現在、われわれが消費している水は、約20年前の人々が自然を大切にしてくれたおかげ。しかし現在、水を育むことができない森もある。どんな森が水を育めるかはクイズ形式で確認したが、写真だけではなかなか実感できない。そこで、実験でその様子を再現してくれた。
テーブルには、「A」「B」と書かれた2種類の土サンプルが置かれ、この土の違いが水を育てる森の違いにつながるという。土の違いから予想するため、「袋は開けないようにね」と説明しても、開けてニオイを確かめてしまう子どももいるそう。興味深く悩み考え、授業に取り組んでいるのが想像できる。 実験器は、何層かに分かれた穴あきパネルの一番上に「A」と「B」の土をいれ、その下のパネルには地層を再現した土や砂が敷かれている。実験器に雨の代わりに水を流し、どうなるのかを実験。森に降る雨は、多少の砂や土が混じっていることから、泥水を上部から投入した。最初はゆっくり小雨程度で、その後、一気に流し入れる。そう、大雨が降ったイメージだ。
「雨が降った」直後、そのうえに水が溜まっていた「B」の土は、その後も水を吸収することができず、泥水が実験器のサイドから流れ落ちてきた。これは降水が土壌に浸透することなく、山の斜面を流れ落ちたことを意味する。この近辺に民家があれば、洪水による被害を受けてしまうことになる。一方、「A」の湿気のあるふかふかの土は水をしっかり貯え、水は地層の下部へとゆっくり流れ落ちて行った。そして一番下からしみだしてきた水は透明に澄んでいた。地表の土の違いが、水を蓄え、育てられるかどうかに大きく影響することが一目瞭然だ。このように森に蓄えられた水が、約20年もかかってようやく天然水になることを学ぶと、改めて水の恵みへの感謝とともに、未来へ引き継がなければいけないと実感した。 出張授業は、担任の先生の他に水育講師にも授業をしてもらうことで楽しく深い学びにつながっている。と筆者が断言できるのは、実は数年前、筆者の子どもが在籍する小学校でもサントリーによる出張授業が開催されたことがあるからだ。本人は「水はプレゼント」という水育で配られるパンフレットを今でも大切に保管しているだけでなく、先ほど紹介した実験のことをよく覚えていた。大人にとっても、自分が住む地域の土壌に意識を向けるなど、水を育み、災害を防ぐための環境意識を高めるなど、学びの多い授業だと感じた。 TEXT:林ゆり