秋もつるバラの開花を楽しむには?
『趣味の園芸』で連載中の「姫野流 つるバラを楽しむ12章」、第7回のテーマは「秋も咲くつるバラ」。秋もつるバラの開花を楽しみたい場合は、返り咲く性質が強い品種を選ぶことが大前提です。返り咲く性質と枝ぶりの関係を知ると、より目的に合った品種選びができます。10月号より、一部抜粋してお届けします。
返り咲きの多い品種を選ぶ
秋もつるバラの咲く姿を楽しみたいと思われる方は多いことでしょう。現在では秋も春に劣らないほど花つきのよい品種がたくさん存在しています。 ただ、つるバラの場合、ラベルやカタログなどに四季咲き性と書かれていても、秋の花数はさほどでもない事例も見受けられます。四季咲き性の木立ちのバラと同様ではないということを念頭に置きつつ、ご希望の品種がどの程度返り咲くのか、インターネットで調べたり、販売元に問い合わせるなどして、少し慎重に情報収集されることをおすすめします。 一部のほぼ四季咲き性といっても過言ではない繰り返し咲き性の「ブラッシュ・ノワゼット」や「レイニー・ブルー」、「クレパスキュール」などでしたら、秋も多くの開花を楽しむことができます。
開花と枝ぶりの関係
秋も咲くつるバラがあるなら、一季咲き性や返り咲きの少ないつるバラは劣っているように思えるかもしれません。 しかし、そうではありません。つるバラは用途によって適した枝ぶりがあります。しっかりと伸びて大面積を覆いたい、こぼれるように咲く優美な姿を楽しみたい場合は、枝の伸長が早くしなやかな一季咲き性の品種がおすすめです。 一方、返り咲きの多い品種ほど、一季咲き性に比べて開花期間が長いため、枝の伸長は抑制されます。また、例外はありますが、花後の剪定で段ができるため、返り咲きの多い品種ほど枝が堅く、太くなりがちです。ただ、どこで切っても開花が得られ、剪定で樹高を調節しやすい利点があります。 その中間のときどき返り咲く品種は、両者の特徴をあわせもった枝ぶりとなります。つるバラの返り咲き性は優劣ではなく、個性とお考えいただけましたら幸いです。 つるバラは一季咲き性が基本ですが、四季咲き性との交配によって、秋にも咲く品種がふえています。10月号では、一季咲き性との違いや、秋に鉢苗を入手して栽培を始める方法、来春の美しい開花のための秋の病害虫対策をご紹介します。 ●連載「姫野流 つるバラを楽しむ12章」 八ヶ岳でバラ農場を営む姫野由紀さんが、1年間の連載でつるバラの基礎知識、広さや高さに合った品種の選び方、美しく咲かせる栽培のコツ、思いどおりの風景をつくる仕立て方などをお伝えしていきます。 姫野由紀(ひめの・ゆき) バラ栽培家 1972年、兵庫県生まれ。10歳からバラ栽培を始める。一般企業勤務を経て故村田晴夫氏のばら園のスタッフに。2012年より八ヶ岳の農場を引き継ぎ、約1000品種のバラの苗木の生産・販売、品種選びや栽培管理のアドバイスを行う。つるバラやオールドローズをはじめ古花、名花にも造詣が深い。 『趣味の園芸』2024年10月号 姫野流 つるバラを楽しむ12章「第七章 秋も咲くつるバラ」より