「土曜ワイド劇場」40年の歴史に幕 日曜朝にドラマ枠新設の狙いとは?
テレビ朝日が、4月から土曜午後9時の「土曜ワイド劇場」の枠をなくすことを発表した。 テレ朝は、新たに日曜日の午前10時にドラマ放送枠「日曜ワイド」を新設。 「土曜ワイド劇場」で放送している高橋英樹主演の「西村京太郎トラベルミステリー」や片岡鶴太郎主演の「終着駅シリーズ」などの人気シリーズや新ドラマを放送するという。 また、4月から「土曜ワイド劇場」の放送枠では、フリーアナウンサー高島彩がキャスターを務める報道情報番組「サタデーステーション」をスタートさせる。
連ドラマ化前の「相棒」や「家政婦は見た!」などを放送
「土曜ワイド劇場」は、1977年の7月から40年近く続く“2時間ドラマ”枠。 過去には、「相棒」や「家政婦は見た!」など後に連続ドラマとしてヒットを飾った作品も多々ある。テレビ誌編集者は語る。 「いわゆる“F2層”や“F3層”と呼ばれる30代半ばから50歳以上の主婦層をターゲットにミステリーやサスペンス作品を世に放ち、長きにわたって愛され続けてきました。『土曜ワイド劇場』の人気を受けて、80年代前半には日本テレビさんが『火曜サスペンス劇場』をスタートさせるなど他局も追随。“2時間ドラマ”ブームが巻き起こりましたが、『土曜ワイド劇場』がブームの火付け役になったのは間違いありません」 テレ朝にとっては功績著しい「土曜ワイド劇場」だが、なぜこのタイミングで終了し、新たに日曜日の午前10時にドラマの放送枠を設けることにしたのか? 芸能評論家の三杉武氏は、視聴者の視聴習慣の変化と昨年11月から発表されはじめた「タイムシフト視聴率」の影響を推測する。
昨年11月から導入されたタイムシフト視聴率の影響も?
11月から視聴率調査会社の株式会社ビデオリサーチは、従来の視聴率に加えて、録画再生で見られた「タイムシフト視聴率」を反映した「総合視聴率」を発表。 これまで視聴率といえば、放送と同時に番組を見た視聴者の割合を示す「リアルタイム視聴率」だったが、新たに録画を7日以内に視聴した推定値である「タイムシフト視聴率」も反映した「総合視聴率」のランキングも明らかにしている。 「いまだに根強いファンを持つ『土曜ワイド劇場』ですが、その一方で視聴者の中にはリアルタイムで見ず、DVDやビデオなどで録画して放送後に見る人も多いのが実状です。ただ、テレビ局サイドとしてはCMスポンサーのウケを考えると、視聴者には“リアルタイム視聴”を望む傾向が強い。なぜなら“録画視聴”だと、視聴者がCMを見ずに早送り機能などで飛ばしてしまうイメージがあるからです。その点、新たに同枠でスタートする情報番組は、番組の特性上、視聴者のほとんどは“リアルタイム視聴”することが予想されますからね」(三杉氏) また、前出のテレビ誌編集者もこう語る。 「娯楽の多様化やインターネットの普及などにより、テレビ離れが叫ばれる昨今。テレビ業界では、『タイムシフト視聴率』を反映した『総合視聴率』が発表されるようになって、かえって“リアルタイム視聴”の重要性がより意識されてきています。今後、高視聴率を期待できるゴールデンタイムにおいては、そうした側面をより意識した番組編成がなされていくでしょう。とはいえ、もちろんリスクも大きい。安易に“リアルタイム視聴”を求めて、情報番組やバラエティー番組を増やした結果、視聴者にソッポを向かれなければいいのですが……」 40年の歴史を誇る「土曜ワイド劇場」も、テレビを取り巻く時代の流れには勝てなかったのか。 (文責/JAPAN芸能カルチャー研究所)