認知症の母を介護する日々を振り返り「私の名前を覚えてなくても…」 安藤優子さんが福井で講演
9月21日の世界アルツハイマーデーを記念した講演会が21日、福井県福井市の県自治会館で開かれた。ジャーナリストの安藤優子さんが、認知症の母の介護経験を振り返り「忘れても発語できなくなっても、人格は失われない。頑張って生きた晩年に、私の名前を覚えてなくてもいいじゃないかと思えた」と語った。 福井東ロータリークラブや県などによる実行委員会が主催し、約300人が聴講した。 安藤さんは、挑戦好きで行動力のある母がいつからか好きだったことを面倒くさがるようになり、原因が加齢か認知症か判断に時間がかかったと述懐。母を高齢者施設に入れた際には「苦労して育てたのに、こんな仕打ちをするのかと言われたのが一番こたえた」。一方で、肉親だと感情的にぶつかってしまうため、プロに任せることが「家族にとっても母にとっても良かった」と話した。 明るくて前向きな母はどこへと思う日々もあったが、認知症の予防や改善などを目的とした「臨床美術」との出合いが転機となった。描いた絵を見て「認知症になってできなくなったことは多いけど、母の人格は変わっていない」と気づけたという。 講演会の後は「認知症になっても安心して暮らせる福井県に」をテーマに県や福井市の担当者が取り組みを紹介した。
福井新聞社