演劇『ライチ☆光クラブ』2025に全力で挑むと意気込む岐洲匠、2025年の自身については「変なプライドを捨てる時期」
「宇宙戦隊キュウレンジャー」(2017年、テレビ朝日)で主演のラッキー役に抜擢されて以降、舞台やドラマで活躍の場を広げている岐洲匠。2023年から2024年にかけて放送されたドラマ「佐原先生と土岐くん」(毎日放送)でも注目を集め、演劇『ライチ☆光クラブ』2025への出演も決定している。そんな彼が芸能界に入ったいきさつや、俳優としてのターニングポイント、俳優仲間とのプライベートでの交流など広く語ってもらった。 【写真】こちらを見つめてほほえむ岐洲匠 ■ジュノンボーイの同期の姿を見て「芸能界に入れば本当にヒーローになれる」 ――芸能界に入ったいきさつを教えてください。 中学生の頃はゲームしてばかりで目標もなく、ぼんやりと過ごしていました。見かねた母が、専門学校のパンフレットを持ってきてくれたんです。それで、「美容師になりたい」と思って、高校と専門学校のダブルスクールで美容師の免許を取りました。その間に、母のすすめで「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」に応募しました。 それがきっかけで今の事務所に声をかけてもらったんですが、当時は美容師の免許を取ることが第一だったので、事務所に所属はしませんでした。そんな中、ジュノンボーイの同期だった西銘駿くんが「仮面ライダーゴースト」(2015、テレビ朝日系)に、渡邉剣くんが「動物戦隊ジュウオウジャー」(2016、テレビ朝日系)への出演が決まって。僕はめちゃくちゃ仮面ライダーが大好きだったので、「芸能界に入れば本当にヒーローになれるんだ!」という実感がわいてきて、どうしてもチャレンジしたいと思うようになりました。 ――仮面ライダーへの憧れが芸能界入りのきっかけになったということですね。 初めて見たのが「仮面ライダークウガ」(2000、テレビ朝日系)だったので、特に思い入れが強いです。周りの子は変身後にしか興味を持っていませんでしたが、僕は変身前の五代雄介(オダギリ ジョー)に憧れを抱いていました。いまだに変身ポーズもできますよ(笑)。 ――では、「宇宙戦隊キュウレンジャー」で主演に抜擢された時の喜びもひとしおだったのでは? 実は、自分が選ばれるとはまったく思っていませんでした。てっちゃん(榊原徹士)がオーディションで演じたラッキーが完璧だったので「この人がラッキーになるんだ」と。でも逆に、てっちゃんは僕にラッキーを演じてほしいって思ってくれていたみたいなんです。当時の僕はほんとにダメダメだったので、プロデューサーさんも「オーディション中に成長が見られなかったら、レッドは難しい」と思っていたそうですが、僕を信じていただき、レッドを任せてもらいました。 ――それから特撮以外の現場に出て感じた壁や課題はありましたか? 「宇宙戦隊キュウレンジャー」の現場ではヒーローになれたことがただうれしくて。たくさん苦労はしましたが、がむしゃらに突き進む毎日でした。その分「ヒーローになる」という思いが強すぎて、きちんとお芝居と向き合うことをやってこないままに俳優になってしまったんだと思います。 特撮を卒業してから、ストレートプレイの舞台のお仕事をいただいたときに、「自由に演じて」と言われても、どうしたらいいのか全然わからなかったんです。でも、その恐怖を乗り越えて自由に演じる楽しさを知ってからは、お芝居が好きになりました。 ■八村倫太郎の支えで乗り越えた「佐原先生と土岐くん」の現場 ――「佐原先生と土岐くん」は、久しぶりの主演作となりましたが、手ごたえはありましたか? 僕個人としては反省点がたくさんありますが、作品としては最高のものに仕上がったと自負しています。久しぶりの主演作でもありましたし、BLも初挑戦でした。地方での短期集中ロケだったし、課題が多すぎて座長としての余裕が足りていなかったと思います。本来であれば年長者の僕が座長として現場を引っ張っていかなくてはならないのに、相手役の八村倫太郎に救われてばかりでした。 彼の笑顔を見ればわかると思うんですが、めちゃめちゃいいやつなんです! 倫太郎だけじゃなくて、監督や現場スタッフ、チーム全体が温かい雰囲気で。みんなに支えられて、最高の作品ができました。 ――またひとつ成長するきっかけになったということでしょうか。 本当に恥ずかしい限りですが、年下の倫太郎に支えてもらって乗り越えられたと思います。最近、彼の所属する「WATWING」のLIVEを見に行ったんですが、感動して泣きそうになっちゃって。見ている僕が泣きそうになるくらいだから、彼自身はもっと感動してるんだろうけど、涙一つ見せずに最後までやりきっていて、改めてかっこいいなと思いました。 ――そんな今、目標とする俳優はいますか? 舞台「魔界転生」で主演を務められていた上川隆也さんです。僕からすると雲の上にいるような方なんですが、本当に礼儀正しくて、僕らにもすごく丁寧に接してくださるんです。劇中の僕のダンスがヘタすぎて(笑)。ステップがまるでできなかったんですが、上川さん直々に指導してくださったり。めちゃくちゃ愛にあふれた方なんです。 ■弾丸旅行に行くほど仲良しの中村隼人とのドライブエピソード ――同年代で仲のいい俳優はいますか? 少し年上ですが、中村隼人くんにはかわいがっていただいています。隼人くんは地方に出ていることも多いんですが、東京に帰ってきたら必ず一緒に遊びます。舞台『巌流島』での共演がきっかけなんですが、特に共通点があるわけではないんです。 隼人くんは歌舞伎の世界にいるので目上の方との交流が多い分、後輩と仲良くなるのは珍しいみたいなんです。でも、なぜか僕とは気が合うと思ってくれたみたいで。弾丸旅行とかしょっちゅう行ってます(笑)。この間も京都に行ってきました! ――とても仲良しなんですね。 先日、隼人くんと「ドライブに行こう!」という話になって。横浜を目指してたんです。実はこれまで占いをやったことがなくて。中華街は占いのメッカだと聞いたので、「今から車で中華街行こう!」って横浜に向かっていたんですが、途中で「やっぱりディズニーランドに行こう」って方向転換しちゃって(笑)。 ――2人でディズニーですか? 隼人くんはディズニーが大好きなんですよ。僕もDisney+に加入しちゃうくらいには好きなんですけど、「どうせならディズニー全然知らないやつも呼ぼう」ということで、宇野結也くんを呼び出したんです。宇野くんはどこに行くかも知らされないまま車に乗せられて、まったく知らないディズニーランドに連行されるというドッキリでした(笑)。 ――楽しそうですね! 結果、めっちゃ楽しかったです。ほんとはカチューシャとかつけていろいろ写真も撮りたかったけど、そんな余裕ないくらいに全力でアトラクションを楽しんじゃって(笑)。隼人くんがエキスパートなんで、僕らはそれに乗っかる感じで。宇野くんはジーニーとアラジンの区別がつかないくらいの初心者でしたが、めちゃめちゃ楽しんでました(笑)。 ■大好きなゲームが交流のきっかけにも ――他に、YouTubeチャンネルでゲーム配信もされていますね。 特に「モンスターハンター」が大好きで。新作の発売日が仕事と重ならなかったら、たぶん1日中やっちゃいます。モンハンは際限なくプレイしてしまうので、やりすぎないように気を引き締めて遊んでます(笑)。 芸能の仕事を始める前の僕は、人見知りというわけではないんですが、あまり自分を出すのが得意ではなくて。家族や親友の前では明るいんですが、陰キャに見られることが多くて。ラッキーの役柄を通して、だんだんと初対面の人にも自分を出せるようになってきて。 今ではどんな人ともコミュニケーションがとれるんですが、昔はゲームの世界の中のほうが自分を出しやすかったです。今でもオープンワールドのオンラインゲームが大好きで、舞台で共演した浜中文一さんと一緒にギルドを組んで、30人くらいの大所帯ギルドを作ってます(笑)。 ――ゲーム好き芸能人として、だんだん認知されるようになってきたのでは? そうですね。イベントでも「ゲーム配信見てファンになりました」という方も来てくれるようになりました。ゲームきっかけで僕を知ってもらえるのは、すごくうれしいです。 ■「初心に返って、初舞台を踏む気持ちで挑む演劇『ライチ☆光クラブ』2025 ――2025年は演劇『ライチ☆光クラブ』2025からスタートですね! つい先日台本をもらって拝読しました。覚悟はしていましたが…やはり独特だなと(苦笑)。 ――個性的なキャラクターの中でも、演じられるタミヤは一般的な感覚の持ち主ではないでしょうか。 だからこそ、難しいなと感じています。一見普通に見えるからこそ、実際に抱えている複雑な感情を、どう演じるかが課題です。これから稽古が始まるので、とりあえずは見た目から入ろうと思って、体重を絞りました。食べることが大好きなんですが、あの制服を着こなすためには細身のほうがいいだろうと思って、食事制限をしています。 今回は初心に返って、初舞台を踏む気持ちで挑みたいと思ってるんです。演劇『ライチ☆光クラブ』2025では「子供のままでいたい」という感情を強く感じるので、本当に中学生の心境でやれたらいいなと思っています。 ――子供ならではの視野の狭さや残虐性が描かれた作品ですよね。 その一方で、機械を開発したり、階級制を導入したり、ゼラを絶対君主として扱ったり…大人がやることを子どもがやっているわけじゃないですか。それによるひずみがあの世界観だと思うので、本当に演じるのは難しいと思います。台本を読んでもまだ、どんな舞台になるのか想像がつかなくて…その分、本当に楽しみなんです! ――そんな演劇『ライチ☆光クラブ』2025から始まる2025年には28歳を迎えますが、どんな年にしたいですか? まだまだ子どもっぽいところが多いので、自分が成長するために、変なプライドを捨てる時期なのかなと思っています。演劇『ライチ☆光クラブ』2025では、これまでの全部を1回捨てて、全力でやりきりたいし、これからいただけるお仕事すべてをまっさらな気持ちで挑みたいです! ◆撮影=山内洋枝 取材・文=NI+KITA スタイリスト=北村梓(Office Shimarl) ヘア&メーク=田中宏昌