「クラス平均点を操作している」、高偏差値なのに進学不振な中堅私立高校と某名門校の差を知る教員の告白
経費で本を買える名門、準備室にも専門書がない中堅
こうした状況に耐えられなくなった二階堂さんは、また別の名門私立に転職した。改めて実感したのが、根本的な待遇の差だった。 「これまで、中堅私立校と名門私立校とで勤務してきましたが、給与や勤務時間だけでなく、教員の扱いがやはり違います。中堅私立は非常勤や若手を下に見る傾向があり、『先生』と呼ばれないことすらありますが、名門校でそうしたことはありません。また、専門科目の勉強を十分にさせてもらえます。中堅私立で担当科目に関する本を読んでいると『他にやるべきことがあるだろ?』と嫌味を言われますが、名門校では本を読んで教員としての自己研鑽に励むのが当たり前です。必要な本があれば、専任教諭も非常勤講師も関係なく経費で購入できますし、教科の準備室には専門書が揃っています。そうやって教員が勉強をし続けることが、生徒のためにもなると思うのです」 勉強が面白くなれば、学校は楽しくなる。実際、名門校は生き生きとした表情の生徒が多いという。そして、教員がつねに学んでいることが生徒の受験対策にも生きてくる。 「『全国大学入試問題正解』(旺文社)という主要大学の入試問題を網羅した過去問題集があるのですが、名門校は非常勤を含む全教員に配布します。それを教員自ら解いて研究するので、生徒も最新の対策ができます。中堅私立ではそういう取り組みがなく、数年前の『赤本』(教学社)何冊かあるだけでした」 もちろん、すべての中堅私立、名門私立が二階堂さんの言うような状態ではないだろう。教員間の風通しがよくて、生徒が生き生きしている中堅私立もあれば、逆に居心地の悪い名門私立もあるかもしれない。ただ、教員が熱心に勉強に取り組めていない高校は、生徒たちにも必要な学びを提供できていないのではないかと二階堂さんは危惧する。 「中堅校に対して思うのは、『教員という職業を履き違えているんじゃないか』ということです。特別なコースを設置して難関大学を目指す生徒を集めるなら、やはり教員も勉強しなくてはなりません。でも実際は、生徒と話すことを仕事だと考える教員が多すぎる気がします。私立高校本来の良さは、自由に教育活動に取り組める点であるはずなのに、もったいないと思います」 大学受験に限らない。「専門的な内容を話すと生徒は食いついてくれる」と二階堂さんが話すように、勉強の楽しさや面白さを伝えるのも学校の重要な役割だろう。私立だからこそ提供できるベネフィットをどう生かすかで、その学校が教育機関として社会や子どもたちにもたらす影響も大きく変わってしまう。二階堂さんが明かした名門校と中堅校のギャップは、そんな気づきを与えてくれたのではないか。 (文:高橋秀和、写真:もとくん / PIXTA) 本連載「教員のリアル」では、学校現場の経験を語っていただける方を募集しております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームからご記入ください。
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