なぜ強い? J1再開後首位守る川崎フロンターレの破竹5連勝裏に小林悠の変貌あり
先月7日のトレーニング中に負傷した小林は右ひざ関節内遊離体と診断され、同15日に患部へメスを入れている。全治は最大で4週間。再開後の3試合はベンチ入りメンバーからも外れ、復活を果たした2試合、計75分間のプレーでリーグ2位タイの4ゴールをあげている。 「今年からキャプテンを(谷口)彰悟に代わってもらったことで、フォワードとして純粋にゴールを奪うことだけに専念してプレーできているというか。あまり意識はしていませんでしたけど、キャプテンということでいろいろな負担があったんだな、といまでは思っています」 もっとも、2017シーズンから達成した史上5チーム目のJ1リーグ連覇は、この年からキャプテンを担った小林のゴールラッシュを抜きには語れない。一転して昨シーズンのフロンターレはYBCルヴァンカップを制したものの、鹿島アントラーズに次ぐ3連覇を狙ったリーグ戦は4位に終わった。 「昨年から先制されると、勝てない試合が続いていました。今日も今年初めて先に点を取られてしまいましたけど、こういう試合で勝っていかないと優勝はないと思っているので」 昨シーズンは先制された試合で4分け6敗と一度も逆転できなかったことが響き、横浜F・マリノスの戴冠を許した。キャプテンという肩書きはなくなっても、胸中に募らせた悔しさは忘れない。だからこそ、2018シーズンの最終節以来となる逆転勝利を、それも2点差をはね返してもぎ取ったことで呪縛からも解放された。鬼木監督は小林の1点目に価値があったと力を込める。 「自分たちに対して集中して戦えば必ず点は取れると思っていたし、ひとつ取れば重なっていくとも予想していた。その意味では、選手たちが焦れることなく1点目を取ったことが大きい」 今シーズンから導入した[4-3-3]システムと、前線から連動して激しいプレスをかける戦い方の習熟ぶり。新戦力の三笘や旗手がフィットしたことでより厚みを増し、5人に増えた交代枠をフルに活用できる選手層。新型コロナウイルスによる中断期間を進化する時間に変え、再開後の5試合で17ゴールを量産している「前王者」の中心に、ゴールへの飢餓感をむき出ししている小林がいる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)